米インフレ低下に弾み-消費者物価の総合指数は順調に低下、コアインフレの低下スピードは今後の賃金動向が鍵

米インフレ低下に弾み-消費者物価の総合指数は順調に低下、コアインフレの低下スピードは今後の賃金動向が鍵
(写真はイメージです/PIXTA)

ウクライナ侵攻に伴うエネルギーや食料品価格の高騰が回避される前提で、CPI総合指数の低下基調は持続するとみられます。本稿ではニッセイ基礎研究所の窪谷浩氏が、23年6月の米国消費者物価指数をみながら、23年末に向けた物価動向の見通しを解説します。

(原油・商品価格)原油・商品価格は22年6月から大幅に低下

原油価格は22年2月下旬のロシアによるウクライナ侵攻に伴いWTI先物価格はウクライナ侵攻前の90ドル台前半から22年6月上旬には一時122ドルまで上昇したものの、その後はウクライナ侵攻開始時を下回る水準に低下しており、足元は75ドル台で推移している(図表4)。

 

 

エネルギーに加え、貴金属や穀物なども含めた国際商品先物指数は原油先物と同様にウクライナ侵攻前の270弱から22年6月に330弱まで上昇した後は低下に転じ、足元は270弱とウクライナ侵攻前の水準で推移している。
 

このように、原油、商品価格ともにウクライナ侵攻前の水準に低下するなど、ウクライナ侵攻後の高騰に伴う物価押上げ要因は概ね解消している。もっとも、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中で今後再びエネルギーや食料品価格が高騰して物価を押し上げる可能性は残っている。

 

(生産者物価)財価格中心に低下も、サービス価格は足元で横這い推移

製造業業者の財・サービスの販売価格を測定した生産者物価(PPI)のうち、最終需要先に対する販売価格を示す最終需要価格は23年6月が前年同月比+0.1%と22年6月に+11.2%のピークをつけた反動もあって20年8月以来の水準に低下した(図表5)。

 


このうち、財価格は22年6月の+17.6%をピークに23年6月が▲4.4%と2ヵ月連続のマイナスとなるなど、20年4月以来の水準に低下した。一方、サービス価格は23年6月が+2.4%と22年3月の+9.4%からは大幅に低下したものの、22年3月以降概ね横這い推移に留まっており、サービス価格の低下は鈍い。

 

(コア財価格)上昇要因となっていた供給制約や中古車価格の上昇は緩和

コロナ禍からの回復過程でCPIのコア財価格は財需要が増加する一方、供給制約に伴い価格が大幅に上昇した。

 

実際に、世界的な供給制約の動向を示す輸送コストやPMIなどからニューヨーク連銀が推計する世界サプライチェーン圧力指数は21年12月に過去からの標準偏差が4.3と98年の統計開始以来最高となり、深刻な供給制約の状況を示した(図表6)。

 

しかしながら、同指数はその後低下に転じ23年5月が▲1.7と逆に統計開始以来最低となった。このため、コロナ禍に伴う供給制約は概ね解消しており、供給制約に伴うコア財価格の上昇圧力は緩和していると言えよう。
 

一方、中古車価格は21年6月に前年同月比+45.2%まで上昇し、コア財価格を大幅に押し上げたが、23年2月には▲13.6%と大幅な物価押し下げに転じた(図表7)。また、5月の▲4.2%までマイナス幅が縮小し、コア財価格の反発要因となっていたものの、6月には▲5.2%と再びマイナス幅が拡大してコア財価格を押し下げた。

 

中古車価格の上昇は半導体不足を受けた自動車生産の減少に伴う新車在庫の低下などが影響していたが、半導体不足が緩やかに解消される中で自動車生産は回復してきている。実際に新車需給の緩和を反映して新車価格は22年4月の+13.2%をピークに低下基調が持続しており、23年6月は+4.1%と21年5月以来の水準に低下している。

 

このため、新車の需給逼迫を背景にした中古車価格の上昇は相当程度解消しており、中古車価格は今後も低位で推移する可能性が高い。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年7月21日に公開したレポートを転載したものです。

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