貸地なら60%程度の評価額になることが多い
②土地を人に貸す、賃貸物件を建てる
何も建物が立っていない更地は、そのままにしておくより、建物を建てたり人に貸したり駐車場にしたりなど、何かに活用するほうが評価は低くなります。なぜなら、人が住んでいるとか、借り手がついているとか、倉庫が立っているとかすると、それ以外の目的に使うことが難しく、更地に比べて活用範囲が限られるため評価が下がるのです。
●貸地の評価
人に貸している土地(貸地)の評価は、「土地の評価額×(1−借地権割合)」で計算します。借地権というのは、土地を借りている人の権利のことです。地域ごとに借地権割合は異なりますが、一般には60%くらいです。高いところになると80%という場合もあります。
仮に、8000万円の土地を借地権割合60%で貸すと、3200万円の評価に下がります。
●貸家建付地の評価
賃貸アパートや賃貸マンション、貸テナントなどの賃貸物件が立っている土地(貸家建付地)の評価は、「土地の評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で行います。借家権割合はほとんどの地域で30%と決められています(一部地域では40%)。
8000万円の土地に賃貸アパートを建てたとすると、借地権割合60%の地域として、6560万円の評価です。更地に比べて、18%のダウンになるのです。多くの資産家が節税目的で賃貸物件を建てるのは、この効果を狙ってのことです。しかも賃貸物件からは家賃収入も得られるので、土地の有効活用としても好まれます。
ただし、賃貸不動産の経営にはリスクもあります。アパートを建てても入居者が入らなければ、家賃は入ってきません。その一方で、修繕やメンテナンスなどの維持費はコンスタントにかかってきます。入居者同士や周辺住民とのトラブルに対処したり、トラブルが起こらないように気を配ったりなどの苦労もあります。
そして、もし相続時に半分にしか入居者がいなかった場合は、貸家建付地の評価減も土地の2分の1にしか適用できません。節税効果は薄いものになってしまいます。
賃貸物件を建てることは節税の観点からは非常に魅力的ですが、必ずしも経営的に成功するとは限りませんので、慎重に検討する必要があります。被相続人のお金で建てた賃貸物件を贈与するという方法であれば、医業の妨げにならず相続財産も減らすことができて一石二鳥かもしれません。
リフォームにお金をかけて資産の圧縮を図る方法も
③自宅をリフォーム、リノベーションする
キャッシュを不動産関連に換えるアイデアとして、自宅のリフォームやリノベーションをするという手も有効です。老後のためにバリアフリーにするとか、安全に暮らすために耐震性を上げる改修をするとか、奥さま孝行としてシステムキッチンを入れ替えるといったことが挙げられます。
リフォームやリノベーションの規模にもよりますが、ある程度まとまった額のお金を使うことになるでしょう。しかも、その費用は無駄に消えるわけではなく、家族の住み心地を良くして喜んでもらえるのですから、生きたお金の使い方といえるのではないでしょうか。
住み心地の良い家になると、家としての価値が上がって固定資産税評価額が上がってしまうのではと気になるかもしれませんが、これは心配無用です。外観が大きく変わったり、家の構造自体が変わるなどしない限り、評価への影響はまずありません。
【図表 貸家建付地の評価シミュレーション】