前回は、キャッシュを不動産に換えることで得られる節税効果を見てきました。今回は、相続税額を左右する土地評価の「補正」について説明します。

土地のマイナス面を評価額に反映する「補正」

土地の評価について、もう少し突っ込んだ話をすると、土地を評価するときは、その土地の現状に合わせて補正を行います。

 

たとえば、いびつな形で使いづらい土地とか、道路がなくて不便な土地は、そのマイナス面をカバーするために何らかの手立てが必要になるでしょう。いびつな土地を有効活用するには、建物の形やデザインを工夫しなくてはなりませんし、場合によっては使えない余白の土地が出るかもしれません。

 

道路のない土地の場合は、そのままでは建物を建てることができない(建築基準法で、建物は道路に接していなければならないとされている)ので、土地の一部を道路として提供しなくてはなりません。そうすると、100%活用することができないわけですから、その分、評価も下げないと不公平になるでしょう。

 

土地を評価するときは、きれいな四角い形で、適度な広さで、周辺の状況も問題なしの“完璧な土地”を100%としたとき、当該土地にどれくらいマイナス面があるかを鑑みて、評価に反映させていいことになっているのです。

 

参考までに、よくある補正の適用地のパターンのいくつかを挙げておきましょう。

 

●間口の狭い土地(いわゆる旗竿地)

●道路幅の狭い土地(幅員が4メートル未満の土地)

●道路に接していない土地

●いびつな形の土地

●がけ地・傾斜地

●土地の上を高圧線が通っている

●線路や高速道路のそばにあって、騒音や振動が激しい土地

●道路より極端に高い・低い位置にある土地

●墓場やごみ処理場など、多くの人が嫌う土地(忌み地)

●敷地内に神社や祠などが立っている土地

● 縄伸び・縄縮みの大きい土地(登記されている面積よりも実際の面積が広かったり、狭かったりする)

●広すぎて使い道が限られる土地(広大地)

10人の専門家がいれば10通りの評価額が出る!?

実際の実務では、これ以外にも補正の対象はいろいろあります。また、補正率はマイナス面の度合いなどによって違ってきます。個別の判断になりますが、目安としては、不整形地だと路線価はすぐに2~3割下がります。広大地は、要件が厳しく判定が非常に難しいですが、適用されれば最大で65%減できます。

 

現実には、100%の完璧な土地などほとんど存在しませんから、たいていの土地には補正がかけられることになります。土地の評価というのは本当に微妙で、10人の専門家がいれば10通りの評価額が出るといわれます。

 

基本的には土地は路線価で評価するのですが、実際の実務ではいろいろな駆け引きがあり、路線価以外の評価基準を使ってやる方法もあります。補正の適用や評価のしかたを変えるなどのさじ加減で、評価は高くも安くもなるのです。

 

自分の土地にどれだけの補正がかけられるか、路線価以外の評価基準で行うのが適正かなどは素人では判断が難しい部分ですので、不動産に詳しい税理士や不動産鑑定士などに依頼するといいでしょう。うまくいけば、思いもかけない大幅な評価減ができるかもしれません。

 

ちなみに、相続税を納税してしまった後でも、5年以内であれば、申請すれば納税しすぎたお金の還付が受けられます。筆者のお客さまでは、5000万円が還付で戻ってきたケースがありました。

本連載は、2016年5月27日刊行の書籍『相続破産を防ぐ医師一家の生前対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続破産を防ぐ 医師一家の生前対策

相続破産を防ぐ 医師一家の生前対策

井元 章二

幻冬舎メディアコンサルティング

医師一家の相続は、破産・病院消滅の危険と隣り合わせ 今すぐ準備を始めないと手遅れになる! 換金できない出資持分にかかる莫大な相続税 個人所有と医療法人所有が入り乱れる複雑な資産構成 医師の子と非医師の子への遺…

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