全体最適。かつ、未来志向の人事評価
指示ゼロ経営では、処遇を決めるための人事評価は行いません。全体最適、かつ、未来志向の人事評価を行います。それは、「パラダイムが違う」と言うほどに、従来のあり方と異なります。
1.「全体最適の人事評価」
2022年、東洋経済オンラインに、「8割の社員が人事評価制度の結果に満足しない訳」という記事が載りました。中には、「正しく評価されないのなら頑張らない」という人までいました。
人事評価への不満は、発揮能力の評価に関するものが多数を占めます。「私が、あの人よりも低評価なんて納得できない」「あの人は、周りのサポートがあって成果を上げたのに、サポートした人が正しく評価されていない」「上司は私の一面しか見ていない」という類の不満です。
社長や上司であれば、チーム全体の成果を一番に考え、全員が、持っている力をいかんなく発揮して欲しいと願うはずです。評価で揉めている会社を見る度、私は素朴な疑問を持つようになりました。「どうして部下は、上司と同じように、それを願わないのか?」と。
考えられる原因は2つあります。 1つは、前述の相対評価が行われていることです。
もう1つはチームワークへの理解不足です。指示ゼロ経営のチームワークの基本は、「1人も見捨てない」です。1人も見捨てないことで全体最適が実現し成果を上げます。舞台と同じです。主役、脇役、エキストラ、木の役、様々なキャストがいますが、素晴らしい舞台は、全員がそれぞれの役割をまっとうして、初めて完成します。
スポーツチームも同じです。メンバー一人ひとりが自分のポジションで、最高のプレーをしないと勝てません。仲間に活躍して欲しいから、ミスがあっても「ドンマイ」と言って励まします。調子が悪い仲間には、アドバイスや支援の手を差し伸べますし、プレー中も積極的にフォローに入ります。
チームワークが真に理解されると、メンバーは全体最適のために、自分にできる行動を取るようになります。会議で発言しない人がいた場合、本人に注意を与える前に仲間が動きます。発言しない原因は、自分よりもよく喋る人がいるからかもしれません。
仲間の誰かが、「〇〇さん、何か意見はないですか?」と聞きます。あるいは、「全員の意見が出るように付箋に書いてから発表しよう」と提案する人が出ます。常に、行動の基準が全体最適なのです。
全体最適が実現すると、社員が使う「人称」が変わります。部分最適では、自分本位なので、「私が」「あの人が」という人称が多く使われます。全体最適になると、チーム本位なので「私たちは」という人称が増えます。メンバー同士が支援し合い、全員が能力を発揮するので、成果を上げた時に、「誰の手柄でしたか?」と聞くと、みんながこう答えます。
「誰の手柄と特定はできない。全員でつくり上げたとしか言えない」
「パラダイムが違う」とは、こういうことなのです。「1人も見捨てない」チームワークが真に理解されると、「個々の評価が必要ない」「個々を評価しようがない」という状態になるのです。人事評価の精度を上げることよりも、この様な世界を目指すことで、人もチームも育つと、私は考えています。
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