そもそも「PR」とは?
「PRってプロモーションって意味でしょ?」
「PRって広告ですよね?」
――以前、筆者がPR会社に勤めていたとき、このような言葉を頻繁に耳にしました。確かに、よくある「PR」という言葉の使われ方は、なにかを宣伝するときや売り込むときに使われがちなので、多くの人はこのように認識しているかもしれません。
PRとは、パブリックリレーションズ(Public Relations)の略語で、組織とその組織を取り巻くステークホルダー(消費者・取引先・従業員・メディア・株主・行政機関……など)との関係を良好なカタチに導く考え方であり、行動のあり方で、簡単にいってしまえば、企業が世の中と素晴らしい関係を築いていくためのコミュニケーション戦略のひとつです。
そもそもPRは、1775年に始まったアメリカの独立戦争が起源とされています。かつてイギリスの植民地であったアメリカが独立するためには、民衆と想いを共有し、ともに行動を起こすことが必要であり、世の中との関係構築を実現しなければならなかったのです。ここから、PRという概念が生まれました。もともと政治的な要素が強かったPRですが、歴史を重ねていくうちに、マーケティングの一部となったのです。
アメリカと日本…「PR」の捉え方の違い
マーケティングの世界で「PR会社」が最前線に立つアメリカ
前述の時代背景から、アメリカはいち早くPRをビジネスにうまく取り入れ、経済発展を実現させた国のひとつです。マーケティングの世界で広告代理店が主に最前線に立っている日本に対し、アメリカではPR会社が最前線に立っています。世界的にファンが多いブランドや世界的企業を数多く輩出しているアメリカではPRという戦略が非常に重要視されているのです。
歴史的背景(民衆との関係を構築し良好な関係を築いた)からアメリカは、消費者に行動を起こしてもらうためには、どのように戦略的に物事を伝えられるのかをコミュニケーションの常識と考え、日々情報を発信しています。その「考え方・行動のあり方」こそが、PRであり、アメリカの企業が世界に物事を発信するのが上手い理由のひとつなのかもしれません。
マーケティングの世界で「広告代理店」が最前線に立つ日本
日本ではまだまだPRに対する理解度が進んでいないのが現状です。また、その影響からPRを生業としている業界のなかでも、それぞれの会社で捉え方が違うことも多々あります。
そもそも日本にPRが伝わったのは、第二次世界大戦後といわれており、GHQが国民統治の方法のひとつとして導入したそうです。しかし、PRの本質的な意味がよくわからなかった当時の行政機関は、日本語で「広く一般に知らせること」という意味を持つ「広報課」を設置したといわれています(当時の日本では、部署名には日本語しか使用できなかったのも影響したそうです)。
その後、PRは宣伝(対象となるモノの特長などを一般大衆に知ってもらおうとする活動)とほとんど同じ意味で使用され、パブリックリレーションズ本来の意味から次第に離れてしまい、異なる概念が植え付けられてきたのです。
そのような日本のPRですが、マーケティングの世界でもうひとつ違う意味で使われるケースがあります。PR=パブリシティという考え方です(パブリシティとはPR手法のひとつで、メディアに対する情報提供を介した、公衆への情報発信手法)。
戦後まもなく高度成長期を迎えた日本では、一般家庭にTVが広く普及したことで、企業の宣伝活動が活発に行われました。当時、人々が情報を入手できるモノとしてはマスメディアがメインだったので、広告とはまた別のパブリシティ活動にも注目が集まり、「PR=パブリシティ」という認識が業界内で浸透してしまったという訳です。
日本において、この歴史こそが「PR」という活動内容が大きく誤解されることになった要因だったのです。このような背景から、PRという言葉ひとつでも人によってさまざまな捉え方があるので(PR=パブリックリレーションズ、PR=宣伝PR=パブリシティ)、まず社内外で共通認識を作ることが大切です。
《最新のDX動向・人気記事・セミナー情報をお届け!》
≫≫≫DXナビ メルマガ登録はこちら