(※写真はイメージです/PIXTA)

「ずっと専業主婦だったのだから、50歳近くになって共働きは難しい……」と思っていませんか。しかし、専業主婦の家庭は、経済的な面で想像しているよりもはるかに損をしていることが多いと、経済コラムニストの大江英樹氏はいいます。本連載では、同氏の著書『50歳からやってはいけないお金のこと』から、共働きの重要性について、一部抜粋してご紹介します。

目先のことよりも「将来」の重要性

これは目先のことだけを考えたらそうかもしれません。ところが、仮に壁を越えて働いた場合、保険料の負担は増えますが、将来は妻も厚生年金が受け取れます

 

50歳の主婦が60歳までの10年間、年収110万円で働き、その後65歳から厚生年金を受け取り始めた場合、働いている10年間で保険料を110万円負担し、65歳以降は毎年約6万円ずつ厚生年金が入ってきます。

 

厚生年金は終身で支給されますから、83歳で、もらった合計額の方が多くなります。現在でも女性の平均寿命が87歳以上であることを考えると、 長生きする可能性の高い女性にとっては悪くない選択肢だと思います。

 

それに、106万円をぎりぎり超えるかどうかというところであれば意図的に抑えるのもありでしょうが、もし積極的に働ける機会があり、もっと稼げるのであれば、稼いだ方がずっと得です。

 

年収160万円で10年間妻が働いた場合…

年収160万円で50歳から10年間働いたとしましょう。その場合、税金と社会保険料を差し引いた手取りの年収は約130万円となります。105万円と比べると25万円増えます。 10年間で250万円です。これに加えて、厚生年金が受け取れます。65歳から受け取る毎年の厚生年金は約9.2万円となるため、87歳まで受け取るとすると合計額は約203万円です。

 

つまり、 50歳から60歳まで働くことで、「壁」を意識して働く場合に比べて約450万円以上も収入が増えるのです。

 

今後、女性の平均寿命がますます延びるであろうことを考えれば、「壁」を気にせず、できるだけ収入を増やすべく働く方がいいということになります。特に、今よりも収入を増やすことができるだけの機会や能力があるのなら、どんどん稼ぐべきです。

女性の方が長生きリスクが大きい

現時点でも平均寿命は女性の方が長いですが、今後も医療技術の進歩によって平均寿命が伸長することが容易に想像できます。したがって、自分が考えている以上に長生きすることでお金が足りなくなるという「長生きリスク」は女性の方が大きいのです。

 

だとするなら、現役時代からできるだけ稼いでお金を準備しておくということも大切ですが、長く働き、そしてできるだけ収入を増やすことで将来の年金額を増やすことがとても重要になってきます。

 

長く働いて年金の受給開始を繰り下げることで、生涯にわたる受給額を増やす方がいい」というお話をしましたが、これはむしろ女性に当てはまることと言ってもいいでしょう。夫の年金は通常の65歳から受給を開始し、妻の年金は受給開始を繰り下げるという人も増えてきています。

 

2022年4月からは繰り下げ時期を75歳まで延ばすことができるようになりました。前述したように、これによって年金受給額が84%増えることになりますから、女性こそ受給開始を繰り下げることを真剣に考えるべきです。

 

たしかに「〇万円の壁」というのは存在しますから、あえて収入を増やさないようにするという選択肢を取るのもわからないではないですが、法律や税制は今後も変わっていきます。

 

一方、働いたという事実は確実に残ってきます。報酬という形や年金受給額という形で必ず見返りを得ることができます。

 

「法律が変わったら、その時に考えればいい」ということではなく、確実に今の収入(給料)と将来の収入(年金) を増やすことができるのであれば、税や社会保険のことばかり気にするのではなく、躊躇せず、ダイナミックに働いて、可能な限り報酬を増やすことを考えるべきだと思います。

 

 

大江 英樹

株式会社オフィス・リベルタス

取締役

 

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50歳からやってはいけないお金のこと

50歳からやってはいけないお金のこと

大江 英樹

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