(※写真はイメージです/PIXTA)

今年も台風シーズンが到来。土砂崩れや河川の氾濫、家屋の床上浸水といったニュースが多く報道されています。地球温暖化の影響か、年を追うごとに台風の被害規模が大きくなっているような印象です。中古マンション市場においてもその影響は大きく、成功者の象徴ともいえる「タワーマンション」ですらその資産価値を貶められるケースもあるのです。

成功者の象徴に押し寄せた、おびただしい泥水

台風によるマンションへ被害として思い出されるのは、2019年に武蔵小杉(神奈川県)のタワーマンション(タワマン)群を襲った「台風第19号」です。この台風は同年10月6日に南鳥島近海で発生し、12日に大型で強い勢力を保ったまま日本列島へ上陸、13日に温帯低気圧に変わるまで東日本を中心に大きな被害をもたらしました。

 

台風が過ぎ去った10月14日、JR武蔵小杉駅の新南改札(横須賀線口)は改札ゲートが水没してしまうほど浸水しました。駅前の道路には泥水が堆積し、タクシーや路線バスの行く手を阻み、交通機関は混乱をきたしました。

 

それだけではありません。同駅周辺に建つ15棟(建築中1棟含む)のタワマンのうち2棟が地下配電設備の浸水によって“機能停止”状態に陥ったのです。この2棟を「Aマンション」「Bマンション」と仮称し、それぞれの被害状況について説明します。

 

Aマンションは東急東横線とJR横須賀線の線路に挟まれた地に建つ大規模コミュニティです。10月13日未明から地下3階部分が浸水し、電気設備を含む多くの設備が故障する等の被害が出ました。これらが復旧するまでに約5日かかっています。

 

BマンションはJR横須賀線の新南改札に程近い立地で、Aマンションと比較すると小規模な物件です。詳しい被害状況は公表されていませんが、10月13日の段階で地下配電設備への浸水によって断水・停電が起き、エレベーターも使えない状況に陥ったようです。これらが復旧するまでに約8日かかっています。

泥水はどこから来たのか?

同年12月、川崎市は台風19号による市街地浸水被害の検証を行いました。その関連資料として市民から寄せられた「浸水被害軽減に向けた要望書」も公開されましたが、そこには「排水桶管のゲート封鎖が遅れたことが大規模水害の原因ではないか?」という声が多く寄せられています。

 

「排水桶管」とは、市街地に降った雨水を河川へと流す排水管のことです。通常、雨水は市街地から河川へと流れますが、大雨などにより河川が増水した場合は川の水が排水桶管を通じて市街地へと逆流、いわゆる「バックウォーター現象」が発生するケースもあります。その場合は排水桶管のゲートを閉めて泥水の市街地流入を防ぐのですが、台風19号の際にはそのゲート封鎖が迅速に行われなかったのです。

 

武蔵小杉駅周辺に泥水をもたらしたのは、上丸子山王町付近にある「山王排水桶管」です。住民たちはこの山王排水桶管のゲート封鎖が遅れたことが致命傷であったと訴えているのです。

 

川崎市上下水道局はゲート封鎖が遅れた理由について、「内陸に降雨または降雨の恐れがある場合は閉鎖しない、という方針に則った」としています。ゲート封鎖を決断したのは逆流が始まって以降で、通常なら1分程度で完了するはずのゲートの封鎖が、泥水の重量に阻まれて約12時間もかかってしまいました。

 

今回の被災を教訓に上下水道局は、山王排水樋管周辺地域の地盤の低い地区の雨水を隣接排水区へ導水するバイパス管を整備し、今後の水害に備えるとしています。

 

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