「5レーン理論」にとらわれすぎると、逆にはめられやすい
日本においてポジショナルプレーを語るうえで欠かせないのは「5レーン理論」(図表1)でしょう。
ピッチを縦に5分割して、攻撃のときに
・1列前の選手と同じレーンにいてはいけない
・1列前の選手の隣のレーンにいるべき
という理論です。このルールを実行すれば、ピッチのいたるところに三角形をつくることができ、前線で5つのレーンを効果的に占有できる…という触れ込みです。
中央のレーンと大外のレーンにはさまれた「ハーフスペース」という用語は、地上波の実況でも聞くくらいポピュラーになりましたよね。
でも、実際に実践した方ならわかると思うんですが、忠実にやろうとするとけっこう不都合が起きる理論になっています。僕も監督を務めるシュワーボ東京で取り入れてみたところ、うまくいかないことが多々ありました。
なぜ「5レーン理論」をやろうとすると問題が起きるのか?
それを解き明かすヒントが、ペップ本の中にあります。「5レーン理論」についてこんなくだりが出てきます。
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4本のラインが引いてある第1ピッチまで私たちを案内してプレーのコンセプトを語り始めた。それも、ここで正確に再現するのは不可能なほど、とてつもない集中力で一人芝居を交えながら、約20分間にわたり説明してくれた。
選手たちが白い4本のラインを越えて、5分割したピッチを移動しながら補い合うのがよくわかる、見事な授業だった。しかし、ペップのジェスチャー付きの説明は竜巻のようで、詳細までを理解するのが難しい箇所もあった。
「ピッチを5分割した5つのレーン状のエリアを認識させて、トレーニングしている。基本的に同じサイドのウイングとサイドバックは絶対に同じレーンにいてはいけない。同じサイドのサイドバックとウイングは、センターバックのポジションによって外側か内側のレーンにいる。理想的なのはセンターバックが広がったときは、サイドバックは内、ウイングは外だ。
〈中略〉
サイドバックが内に入れば、敵のウイングを引きつけることができる。その敵のウイングがサイドバックについてこなかったら、私たちはピッチ中央にフリーマンを持つことになる。もし、敵のメディオセントロがカバーに入りサイドバックの対応をしたら、今度は私たちのインテリオールがフリーマンだ」(『ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう』より)
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要約すると、
・サイドバックが中に入って相手ウイングがついてきたら、外へのパスコースが開く
・もし相手ウイングがついてこなかったら、今度は中へのコースが開く
ということです。
相手がズレたときに誰がフリーマンなのかを認識しろ、ってことですね。
ただ、先ほど言ったように、これをそのままやろうとすると不都合が起きてくるんですよ。
結論から言うと、現代サッカーにおける守備戦術のアップデートによって、「5レーン理論」にとらわれると逆にはめられやすくなるんです。