(※写真はイメージです/PIXTA)

2015年9月、ニューヨーク市立大学の教授でーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏が、「未来の日本政府あるいは日銀総裁」へ手紙を書きました。その内容について、フィデリティ・インスティテュートの首席研究員である重見吉徳マクロストラテジストは、いま、まさに日本で起きつつある状況が書かれているといいます。その“驚きの内容”をみていきましょう。

「時間軸政策」の2つの問題点

ただし、この時間軸政策には次の2つの問題点がありました。

 

①長期停滞

1つは、「ずっと未来は暗いままなんじゃないか、だとすれば、『需要が回復して経済が正常化し、完全雇用となる未来』には現実味がない」という話です。

 

仮に人々が「いつまでも日本経済はダメだ」と思えば、将来の経済正常化はおろか、そのときの金融緩和はイメージできず、現在の支出を刺激する可能性は低くなります。サマーズ元財務長官が唱えた『長期停滞仮説』がその一例で、実は、クルーグマン教授が冒頭の手紙を書いたときには、彼自身も半ば諦めぎみでした。

 

②時間的非整合性

もう1つは、「いざ『経済が正常化して完全雇用となる未来』が訪れ、インフレが上がり始めれば、日銀にとってはインフレ率を安定させるために金融緩和を止めることが最適になるので、過去にした約束は反故にされるんじゃないか」という話です。

 

仮に人々が「日銀は守れもしない約束をしているだけだ」と思えば、将来のインフレはイメージできず、現在の支出を刺激する可能性は低くなります。

 

ただ、いまは、無理だといわれた1つ目の『経済が正常化して完全雇用となる未来』が実現しつつあります。

 

[図表9]に示すとおり、パンデミックとロシアによるウクライナ侵攻、さらには先進国の労働力不足で総供給曲線が【左】にシフトしました。そして、財政出動で総需要曲線が【右】にシフトして交点=自然利子率がプラスになっています。

 

すなわち、実質金利しだいで、インフレ率を高めることができます。

 

[図表9]40年ぶりに訪れたインフレの「機会」金融政策しだいで、インフレ期待を高められる可能性
[図表9]40年ぶりに訪れたインフレの「機会」金融政策しだいで、インフレ期待を高められる可能性

「経済が正常化する未来」はすぐそこにある

実際、そうした「経済が正常化して完全雇用となる未来」はやってきつつあるのでしょうか。

 

筆者はそう考えます。その一番の証拠が、金融市場が「そろそろ金融緩和を解除するんじゃないかと思い始めている」という点に見出せるでしょう。おそらく普通のエコノミストなら、「賃金と物価の好循環」を確認するのはどう考えても3年くらいは必要だと考えるでしょう。

 

他方で、[図表10]に示すとおり、直近7月のESPフォーキャスト調査によると、彼らは早期のイールド・カーブ・コントロール(YCC)解除をみています。つまり、「約束は反故にされるんじゃないか」と疑い始めています。

 

[図表10]エコノミストは早期のYCC撤廃を見込む
[図表10]エコノミストは早期のYCC撤廃を見込む

 

しかし、先ほどの「クルーグマンからの手紙」の予言ではありませんが、ここで約束を反故にし、景気後退や財政再建によってインフレがアンダーシュートしたら金融市場の信頼は崩れ、「次」はありません。

 

植田総裁にとってみると1998年に日銀の審議委員に就任されてから、「25年のインフレ目標との闘い」が完全に「おしまい」になってしまいます。ですから、ここは大事にいく必要があるでしょう。

 

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重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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