妻とその父母による面会交流の妨害
その過程では、①翔平さんが提案した子どもが喜びそうな場所・方法での面会交流をことごとく妻が認めない、②妻の代理人弁護士が「子どもが嫌がっていて、子どものためによくないから(面会交流を)差し控えたい」と連絡してくる、③招待状を得て翔平さんが参加した保育園の運動会に警察を呼ばれる、④「子どもたちは発達障害だから、本人たちのペースでの面会交流を行うべき」、という妻側による医師の診断書の提出など、明らかな妻とその父母(子どもの祖父母)による面会交流の妨害行為がいくつもありました。
裁判所は、面会交流しなかった場合には損害賠償を認めましたが(間接強制)、妻側は「父親には面会交流を請求する権利がない」と主張しました。最終的には、最高裁が妻側の主張を退けましたが、子どもの拒否意思を盾に面会交流はできないままでした。
妻の両親、とくに父親(子どもの祖父)は、そもそも翔平さんと娘(子どもの母親)の結婚に反対でした。子どもの祖父は、自分の娘が大学を卒業したら、地元に戻って教師として働くことを望んでいました。
ところが、その意に反し、卒業前に翔平さんと出会った娘は妊娠し、専業主婦となりました。娘の離反を受け入れがたかった祖父の心中には、「いつか娘と孫を自分の手元に取り戻したい。自分から娘らを奪った翔平さんに仕返ししたい」という思いがあったのかもしれません。子どもを連れ去って地元に戻った翔平さんの妻は、子どもの世話を両親(子どもの祖父母)に任せて祖父が望む教育職につき、経済的自立を遂げたそうです。
最も苦しんでいるのは子ども
虚偽DVによって、子どもを連れ去られた別居親たちによる「女性が行政のDV相談に行くと、すぐにDV証明などが出され、本人が希望すれば簡単にシェルター避難になり、地裁に訴えれば保護命令が出る」との主張をよく耳にします。
たしかに翔平さんのような例は他にもあります。裁判所が「DVも虐待もなかった」と認めているのに、面会交流ができないものも多く、支援措置も出ているため、子どもの居場所さえわからないままというケースもあります。
しかし、これは行政機関等でDV相談員を務めてきた経験のある私から見ると、とても不思議です。重篤なDVを受けていても、「本人の意思が固まっていない」などと言って避難させてくれなかったり、「命の危険があるとまでは言えない」と、保護命令が出なかったりすることも少なくありません。
支援措置を受けるにも、「本当に危険性があるのか」と行政の窓口で執拗に尋ねられたり、条件に該当しないと突っぱねられたりします。なぜこんなにも行政の対応が違うのか。その理由は謎ですが、そのくらい今のDV防止法とその運用にはさまざまな問題があるということなのではないでしょうか。
DVの渦中で苦しんでいるにせよ、虚偽DVで連れ回されるにせよ、一番の被害者は子どもです。翔平さんのケースでは、子どもたちが「大好きな父親を拒否しなければならない」状況のなかで苦しみ、会わない選択を強いられていく様子がありありと見て取れます。しかもそうやって子どもを苦しめているのは、子どもを最も愛し、守るべき立場にいるはずの、親なのです。
離婚や調停は勝ち負けではありません。面会交流は復讐の道具でもありません。明確なのは、そうした運用は子どもを傷つけ、子どもから愛する半身(別居親)を剝ぎ取る非道な行為であるということです。