亡き父がかけてくれた保険
人生には、予期せぬトラブルに遭遇することが度々あります。トラブルが大きければ大きいほど、困惑し、眠れない夜を過ごすことになるかもしれません。
佐藤孝さん(仮名・45歳会社員)も、そんな状況に直面した一人です。孝さんが弁護士である私、鈴木の元に相談に来たのは、梅雨が明け、本格的な夏が始まろうとしていた頃でした。
「突然お伺いしてしまい、本当に申し訳ありません」私が代表を務める弁護士事務所に訪れた孝さんは、とても物腰が低く、丁寧な言葉遣いをされる方でした。そして、ゆっくりと椅子に腰を下ろし、話し始めました。
「とんでもありません。一体どうされましたか?」と私が尋ねると、孝さんは「実は自分が受け取るはずだった保険金の受取人が、いつの間にか変更されていて……。どうしたら良いかわからず、こちらに相談に来ました」と、少し声を震わせながら話しました。
「それは大変ですね」私は状況を理解するために、まずは孝さんの家族構成をお伺いすることにしました。
「私は、一般的な家庭よりも少し複雑な環境で育ちました」
孝さんは、4人兄弟の末っ子として生まれました。幼い頃に両親が離婚し、孝さんは父親に引き取られたそうです。
残りの3人の兄弟は、平日は母親側の家に住み、休日は父親側の家で過ごすといった生活をしており、正式にどちらかに引き取られることはなく、曖昧な環境のままで育ったと言います。
「4人兄弟の中で、これまで私だけが父と共に生活し、持病のある父の世話をしていました。父の持病のために、料理や掃除などの家事はもちろん、外出時には車を運転したり、病院に付き添ったりと、日々の生活の大部分を支えていました」と孝さんは続けました。
しかし、そんな父親をサポートする孝さん自身にも、困難なことがありました。見た目では分からないですが足に障害があり、長時間歩くと足が痛くなり、自由に動くことが難しくなるとのことでした。
そんな孝さんのことを、亡くなった父親は生前から心配しており、「お前には障害もあるから、保険をかけておこう」と言って、生命保険に加入していました。