(※写真はイメージです/PIXTA)

家族の突然の死去──その後、じつは本人が思わぬ額の資産を保有していた、ということは多々あります。「資産はとりあえず売って現金化するのがいいのでは」と思う方もいるかもしれませんが、それ以外の有効な選択肢が存在するかもしれません。本記事では、後藤光氏が代表を務める株式会社サステナブルスタイルが運営する、相続・終活に関する情報を発信するwebサイト『円満相続ラボ』監修のもと、一般社団法人証券相続普及協会・代表理事である小林裕氏が、証券口座を相続することになった高橋美奈子さん(50代・仮名)の実例をもとに解説します。

父の急逝…。3億円もの資産があることが発覚

家族の突然の死により上場株を相続する場合、相続した株式を現金化することを検討する人々がいます。当然、それは一つの選択肢です。しかし、資産を成長させるという視点も存在します。また、遺産を親から受け継いだ意義深いものとして活用したいと考える方や、保全したいと思う方もいらっしゃるでしょう。

 

筆者が美奈子さんから相談を受けたのは、関東でも雪がちらつく寒い冬の時期でした。

 

彼女は、「突然亡くなった父の資産を、私と母が相続することになりました。私も母も、父が亡くなってから初めて証券口座があることを知りました」と筆者に話しました。

 

「驚いたことに、父の証券口座には時価で3億円もの資産があり、銘柄数も40以上ありました。私と母は、証券口座も開設したことがないし、株のことなんて考えたことも学んだこともないまったくの素人です」と美奈子さん。

 

そんな中、遺産分割時にサポートを受けた弁護士の先生から、証券取引と相続に精通している筆者を紹介されたのだそうです。

明らかとなった父の想い

現在、50代独身で、美容業界の会社経営者をしている美奈子さんは、社会人になってからずっと仕事一筋で、両親の資産状況にはあまり関心がなかったといいます。

 

「相続した資産の一部は相続税の支払いに充てる必要がありますが、とりあえず残りの資金は不動産の購入に活用するのがよいのではないかと考えています。どの投資先を売却するのがよいでしょうか?」(美奈子さん)

 

筆者のこれまでの経験からすると「売る」ことは手段であって、「この証券口座をどう活用するか?」という目的が明確であることが大切だと考えています。ですから、まずは美奈子さんがどんな価値観を持っているのか、今までどのような生活をしてきたのかを、もう少し伺う必要があると思いました。

 

美奈子さんは一度深く考えた後、語り始めました。

 

「私は今の仕事に満足しており、順調に進んできたため、これまで資産運用や株式投資に関心を持つことはありませんでした。そのため、正直どうすればよいのか分からず……」

 

次に、隣にいたお母様に向かってこんな質問を投げかけました。「この証券口座の資産を、旦那様はどのように築かれたのですか?」。

 

「夫は公務員で、これまで職務に真面目に励んできました。また、祖父母から引き継いだ財産を上手く運用して、現在の資産を築き上げたようです。私たち夫婦の充実した老後を思い、また、仕事が順調だとはいえ美奈子が困った時には彼女をサポートしたい、と考えていたのだと思います」と話すお母様の目には、涙が浮かんでいました。

 

しばらく時間を置いてから、美奈子さんはゆっくりと口を開きました。

 

「…これらの株式には父の想いが込められていたのですね。そう考えると、父が遺してくれた資産を守りたいと思います」

 

最初は上場株を売却することしか考えていなかった美奈子さんでしたが、お父様の死後、明らかになった証券口座を通じて、お父様の家族に対する深い想いに気付くことができました。

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※後藤光氏が代表を務める株式会社サステナブルスタイル監修のもと、作成しています。

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