国内企業の99.7%を占める中小企業は、毎年4万件以上が倒産に追い込まれています。そんな中小企業に永続性を高める経営をアドバイスをする、経営コンサルタントの石原尚幸氏が、経営の質を上げるために見るべきポイントを解説します。
総資産を圧縮するために考えるべきこと
つづいて、総資産について解説したいと思います。
資産とは大きく2つ「流動資産」と「固定資産」です。
「流動資産」には、現預金や売掛金、商品在庫が含まれます。総資産をギュッと圧縮するためには現預金を増やして、売掛金の回転日数を少なくし、在庫をもつ日数をなるべく短くするのが有効です。
業種業界によっては売掛サイトを長くとる商習慣があったり、在庫を長期間抱えざるを得なかったりするかもしれません。それでも出来る限りサイトを短くし、在庫を圧縮することが大切です。
ここで大切なのは現場任せにしないこと。現場に任せておいて「売掛サイトが短縮できた」「在庫が圧縮できた」という話を私は聞いたことがありません。社長が覚悟をもって指針を出す必要があります。売掛金、在庫の管理を見直すことで短期借入金の返済も進みます。
「固定資産」は主に土地や建物です。ここで考えてほしいのは「遊休資産がないか?」ということです。遊休資産とは、本業に貢献していない資産のことを指します。たとえば、誰も使用していない空き地や別荘などの不動産ですね。
私のクライアントのなかに、広い農地を所有している方がいらっしゃいました。そこで「この農地を何かに使えないかな?」と考えた結果、農園の経営を始めました。
このような観点で、遊休資産が利用できるかどうかを考えてみるといいと思います。ポイントになるのは、利用できるか? できないか? という点です。もし利用できなければ、人に貸す。もし人に貸すことができないなら最後は売ることになりますが、できれば利用する・貸すという形で運用していきたいところです。
以上、整理すると
・経営とは資金を調達し資産に変え、売上と利益を上げること
・会社の経営の質はROA(経常利益÷総資産)で表せる
・ROAを上げるためには、経常利益を増やすか、総資産を圧縮する
・経常利益を増やすには、粗利を増やすか、固定費を減らす、営業外収益を増やす
・総資産を圧縮するには、売掛金・在庫を削減し、遊休資産を無くす
となります。
決算書を眺めながら、自社の経営体質を強化するポイントを探ってみてください。
石原 尚幸
株式会社プレジデンツビジョン 代表取締役
株式会社プレジデンツビジョン 代表取締役
1973年、愛知県名古屋市生まれ。
コーヒー卸商「石原珈琲商会」の三男として育つ。幼少の頃から父の配達についていき、「明日の売上がなかったら、お前の目の前のごはんは食べられないんだぞ」と言葉をかけられていたのが、商売の原点。上智大学経済学部経営学科卒業後、大手石油元売に入社。日本一ガソリン代が安い激戦区に担当営業として赴任。赤字となってしまった大手特約店にて、2年間で3億円のV字回復を実現したことが評価され、31歳で社長賞を受賞。34歳で独立起業後は、現場で培った経営ノウハウにファイナンシャルプランナー資格(1級FP技能士)、MBA修得で得た知見も併せ、成果にコミットするV字回復メソッドを体系化。「売上に偶然はあるが、利益に偶然はない」という理念のもと、社外にいるものの、社長の傍らに寄り添う「社外参謀」としてクライアントのビジョン実現へ邁進している。直近では「父が子に伝える13歳からのお金に一生困らないたった3つの考え方」を上梓し、お金と賢く付き合うやり方と考え方をわかりやすく伝える活動も行っている。
【公式サイト】
株式会社プレジデンツビジョン:https://presidents-vision.com/
ジャパンコンサルティングファーム株式会社:http://www.japan-cf.com/
【資格等】
・1級FP技能士
・ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA(経営管理修士・専門職)
【主催する団体】
・ジャパンコンサルティングファーム(株) 代表取締役会長
・五つ星★メンバーシップ 主宰
【著書】
『社長!お金は「ここだけ」押さえれば会社は潰れない〜2枚のシートで利益とキャッシュを確実に残す!(ダイヤモンド社)』
『父が子に伝える13歳からのお金に一生困らないたった3つの考え方(三笠書房)』
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