(※写真はイメージです/PIXTA)

長年、病を患っていた父親が他界。葬儀が終わったとたん、実家に寄りつかず、親の介護も一切協力しなかった兄から、「遺産を渡せ」と連絡が……。長年にわたって介護してきた側として「一銭たりとも遺産を渡したくない」という気持ちはわかります。では、「介護に協力しなかった兄弟姉妹に遺産を一切分けない」ことは法的に認められるのでしょうか。ベリーベスト法律事務所の代表・萩原達也弁護士が解説します。

相続が発生した“後”にできる対処法3つ

生前の対策は、被相続人の協力がなければできません。しかし、すでに相続が発生しているという場合でも、もらえる遺産を増やせる方法はあります。

 

1.特別受益の持ち戻し

「特別受益の持ち戻し」とは、生前に被相続人から生前贈与(特別受益)を受けていた相続人がいる場合に、遺産分割時に特別受益の金額も含めて計算することで、相続人間の不公平を解消する制度です。

 

たとえば、父親の介護に協力してくれなかった兄が、生前に父親から1,000万円の贈与を受けていたとします。父親が亡くなった時の遺産が2,000万円で、相続人が兄と妹の2人である場合には、本来は、兄が1,000万円、妹が1,000万円を相続することになります。

 

しかし、特別受益の持ち戻しをすることにより、分けるべき財産が3,000万円(遺産2,000万円+特別受益の持ち戻し1,000万円)となり、これを法定相続分(2分の1ずつ)で分けると、それぞれが1,500万円ずつ取得するところ、兄は生前にすでに1,000万円を受け取っていますので、相続に際しては、兄が500万円、妹が1,500万円を相続することができます。

 

2.寄与分

「寄与分」とは、被相続人の財産維持や増加に貢献した相続人がいる場合に、その貢献度に応じて受け取る遺産を増やすことができる制度です(※寄与分の詳細については、次の章で説明します)。

 

3.特別寄与料

寄与分が認められるのは、相続人に限られますので、相続人以外の人が介護などに尽力したとしても寄与分を主張することはできません。

 

しかし、相続法の改正により令和元年7月1日から「特別寄与料の制度」が新たに導入されました。これにより、相続人以外の親族が無償で療養看護を行ったといった場合には、寄与に応じた金銭を請求することができるようになりました。

 

この制度を利用することで、不義理な兄弟姉妹にではなく、介護に協力した親族が財産を取得することができる可能性があります。

 

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※本記事は、公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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