自治体の経費率が「高くなる構造」になっている
以上がふるさと納税のしくみの概要ですが、このしくみの下では、ともすれば経費率は高くなってしまいがちです。
総務省の資料によれば、2021年度に自治体が負担した経費総額は寄付額の46.4%と、半分近くに達しています(総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(2022年実施)」参照)。
46.4%というのはあくまでも全自治体の平均なので、なかには50%を超える自治体もあります。また、いわゆる「隠れ経費」の存在も指摘されており、それも含めると、実質的な経費率はさらに高くなるとみられます。
なぜ、このようなことになっているのでしょうか。
寄付先の自治体では以下の経費がかかります。
【ふるさと納税の経費(寄付先自治体)】
・返礼品の仕入れ価格
・返礼品の配送料
・専門サイトへの手数料(「さとふる」「ふるナビ」「ふるさとチョイス」「楽天」等)
・その他の経費
これらはいずれも必然的にかかる経費ですが、高くなってしまう主な要因としては以下の2つが挙げられます。
【経費が高くなる要因】
1. 返礼品競争の激化
2. ワンストップ特例の利用の拡大
それぞれについて解説を加えます。
◆1. 返礼品競争の激化
第一に、返礼品競争の激化です。
ふるさと納税を利用する人の多くは、寄付と引き換えに送られてくる返礼品が目当てです。したがって、自治体の側では、より魅力的な返礼品を揃えることによって、多くの寄付を獲得しようと努めることになります。
よく「返礼品競争」といわれるものです。これは、自治体どうしが魅力を競い合うというプラスの面がある反面、エスカレートすると、経費率が高くなる原因となります。
なお、これについては総務省の「告示」によって、寄付受入額に占める返礼品の調達経費を3割以下にしなさいという「返礼割合基準」が定められています。
◆2. ワンストップ特例の利用拡大
第二に、ワンストップ特例は、寄付をする納税者にとって簡易である反面、寄付を受ける自治体の事務負担が大きくなります。したがって、ワンストップ特例の利用が拡大すればするほど、ふるさと納税の経費率が高くなるということです。
全額が居住自治体の住民税から控除されることになります。したがって、確定申告と比べると、居住自治体の負担が大きくなるのです(その分を国が補てんする制度はありません)。
総務省が告示した「新ルール」
この実態を重く見た総務省は2023年6月27日付で「告示」の改正を行いました。主な内容は以下の通り、「経費に算入すべき費目の拡大」と「返礼品の要件の厳格化」です。
【告示の主な改正内容(2023年6月27日付)】
・経費に算入すべき費目の拡大:募集に要する費用について、ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて寄附金額の5割以下とする
・返礼品の要件の厳格化:加工品のうち「熟成肉」と「精米」について、原材料が当該地方団体と同一の都道府県内産であるものに限り、返礼品として認める
このような取り組みが、経費率の適正化にどの程度繋がるのか、経緯を見守っていく必要があります。