大企業の大卒サラリーマン、出世すれば限りなく「大台」へ
6月も終盤、すでにボーナスを受け取っているサラリーマンも多いことだろう。
コロナも収束に向かい、業績が上向いている企業も多いが、状況は予断を許さない。そんな中で支給されるボーナスは、会社からの評価がつぶさに反映されたものになるはずだ。
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、大企業(従業員1,000人以上)勤務のサラリーマン(平均年齢42.3歳)の平均給与は月40.5万円、賞与も含めた年収で705.4万円。平均して月収の約4倍の賞与を手にしている。
大企業勤務の新規学卒者(大学)の給与は、男性で月23.4万円。年齢を重ねるごとに給与は上昇を続け、50代前半で月収57.2万円、年収988.1 万円に。年収1,000万円へ限りなく近づいていく。
当然だが、社内で昇進すればそれに伴い給料も上がる。投資や転職など収入を上げる方法は様々あるが、一番の王道は「勤め先での昇進」だろう。
上司に嫌われ、社内での立場も微妙に
だが、仕事だけしていれば評価が上がるというような、単純なものではないようだ。
仕事にまじめに取り組んで実績を上げるのはもちろん、周囲との円滑なコミュニケーションがとれること、部下や後輩の指導ができること、人間関係のトラブルがないこと、なにより上司の覚えがめでたいことが重要な模様。そして――1回でもヘタを踏んだら、出世の芽はつぶれかねない。
ある40代の男性は、自嘲気味にいう。
「直属の上司とはとてもウマが合い、最初は評価も高かったんです。ですが、一緒にかかわったプロジェクトで、意見が割れたことがあって。私も悪かったのですが、かなり強く意見を主張してしまいました。どうやらプライドを傷つけてしまったようで、上司と距離ができたのは、それからです…」
直属の上司の気分を損ねた男性は立場を失い、次第に重要な仕事を任されなくなっていったという。一方、上司のほうはとんとん拍子に出世。男性の同期たちもそのあと追うなか、男性はひとり取り残された。
「無視されたり、暴言を吐かれたりしたわけではないんです。挨拶も普通ですし、仕事のやり取りは表面上問題ない。でも、ゆっくり少しずつ距離ができ、いつの間にか人間関係の輪から外されたというか。いまは完全に部外者のような扱いで、部署内でも〈お客様〉みたいで…」
「いまさら出世しようとは思いません。気楽に適当に働きますよ」
給料、年金に見る「埋められない格差」
では、一生平社員だった場合、役職者とどれほど給与差が開くのだろうか。
前出の調査によると、大企業の係長級は平均44.6歳、課長級は48.5歳、部長級は52.8歳だった。月収は、係長昇進時に39.8万円→43.5万円に、課長昇進時に43.6万円→60.7万円に、部長昇進時に63.6万円→74.8万円に昇給する。
一方、平社員(役職なし)の場合、給料は右肩上がりだが、月収のピークは50代後半で45.7万円に過ぎない。年収も800万円に届かないままだ。
◆大卒サラリーマン「役職なし」の給与の推移
20~24歳:24.1万円/369.0 万円
25~29歳:28.4万円/514.6 万円
30~34歳:33.3万円/601.0 万円
35~39歳:37.8万円/682.1 万円
40~44歳:39.8万円/703.8 万円
45~49歳:42.3万円/735.7 万円
50~54歳:45.5万円/794.3 万円
55~59歳:45.7万円/783.8 万円
出所:厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』
平均的な年齢で係長、課長、部長へと昇進した場合と、平社員で終わったサラリーマンの生涯年収は、前者は3億0,448万円、後者は2億4,813万円だ。
では、65歳からもらえる年金額はどの程度差が開くのか。
厚生年金の基本となる平均標準報酬額は、順調に出世したサラリーマンは65万円、平社員のままのサラリーマンは56万円。厚生年金部分は前者で13.1万円、国民年金と合わせると19.7万円程度。後者の厚生年金部分は11.3万円、国民年金と合わせると17.9万円程度。月に2万円の差ではあるが、年金世代にとって決して小さいものではない。男性の平均年齢から計算すると、生涯で450万円ほどの年金差になる。
これらはあくまでも平均額に基づいた試算に過ぎないが、「出世した人」「出世を逃した人」の間には埋められない差が存在するのは事実だろう。
「平社員で十分」と開き直ったところで、人生における影響は、あまりに大きいといえるのではないか。
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