(※写真はイメージです/PIXTA)

相続や贈与で財産を家族に渡すとき、財産を受け取った人が相続税や贈与税を支払うことになれば、その分だけ渡せる財産が実質的に減ってしまいます。──本連載は、司法書士法人みどり法務事務所が運営するコラム『スマそう−相続登記−』から一部編集してお届け。本稿では、税理士法人ブライト相続の天満亮税理士が監修した記事より、相続税と贈与税の基本的な仕組みについて解説し、税率や計算方法など2つの税金の違いを紹介します。

3特例制度の違い

配偶者が遺産を相続する場合、配偶者控除によって1億6千万円の遺産まで相続税はかかりません。また、配偶者や同居の親族など、一定の要件を満たす人が被相続人の居住用・事業用の土地を相続する場合、小規模宅地等の特例を使えると土地の価格を最大80%減額してから相続税を計算できます。

 

一方で、贈与税にもさまざまな特例制度があります。

 

例えば夫婦間で居住用不動産を贈与する場合、婚姻期間が20年以上など一定の条件を満たせば2,000万円の贈与まで非課税です。また、贈与する資金の使途が決まっている場合は、住宅取得等資金や教育資金、子育て資金を贈与しても特例制度によって一定額まで非課税にできる場合があります。

【計算例】相続税と贈与税の税額を比較

同じ財産を相続と贈与で渡した場合に税金が一体いくら変わるのか、具体的なケースに沿って計算してみましょう。ここでは「親の財産が現預金4,000万円、将来相続人になる人が長男1人」というケースを考えます。

 

相続税

相続人が1人のため、基礎控除額は3,600万円で、遺産額4,000万円から基礎控除額3,600万円を引いた額は400万円です。税率は10%なので400万円に税率10%をかけて課せられる相続税は「40万円」と計算できます。

 

贈与税

贈与額4,000万円から基礎控除額110万円を引いた額は3,890万円なので、長男が18歳以上で特例税率が適用される場合は税率50%・控除額415万円です。3,890万円に税率50%をかけて控除額415万円を引くと、課せられる贈与税は「1,530万円」と計算できます。

 

相続税と贈与税の税額を比較すると、40万円と1,530万円で1,490万円もの違いが生じることが分かります。

生前に相続税対策をするときの注意点

財産額が相続税の基礎控除額を超えて相続税がかかる場合でも、生前に財産を贈与して将来の相続財産を減らせば、相続税の課税対象となる遺産が減って税負担を軽減できます。ただし、相続税対策として生前贈与をするときには、以下の点に注意が必要です。

 

・相続開始前3年以内の贈与は、相続税の課税対象になる

・名義預金と見なされて相続税の課税対象になる場合がある

・複数年に分けて贈与しても一括して課税される場合がある

 

まず、相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税対象になるので、亡くなる直前に慌てて贈与しても、相続税の課税対象を減らすことはできません。また、財産を贈与したつもりでも、単にその人の名義になっているだけの名義預金と見なされると、贈与自体が成立していなかったと税務署から見なされて、相続税の課税対象になる場合があります。

 

そして、各年に110万円以内で贈与した場合でも、最初からまとめて贈与する意思があったと税務署から見なされると、複数年に渡る贈与に一括課税される場合があるので注意が必要です。1,000万円を毎年100万円ずつ10年に分けて贈与し、いずれの年も非課税枠の範囲内にしたつもりでも、1,000万円に一括課税されれば贈与税がかかります。

 

相続対策では専門的な知識が必要になり、一般の方が自分で対策を考えると後々に困る場合やトラブルになる場合も少なくありません。将来の相続に備えて対策を検討される際は、専門家への相談がおすすめです。

まとめ

相続税と贈与税は税率や基礎控除額、特例制度など、さまざまな点で違いがあります。そのため、どちらが高いと一概に言えるわけではありません。節税対策を考える場合は、ご家族や財産の状況などを踏まえて検討が必要となります。

 

相続開始直前に財産を贈与しても相続税の課税対象になるなど、亡くなる直前に相続対策を始めてもできることが限られるので、生前の相続対策は少しでも早くから考え始めることが大切です。

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