「認知症による行方不明者」過去最多1万8,709人…「家族が認知症」の人に知ってほしい、利用率“わずか2.2%”の「休業とお金の制度」

「認知症による行方不明者」過去最多1万8,709人…「家族が認知症」の人に知ってほしい、利用率“わずか2.2%”の「休業とお金の制度」
(※画像はイメージです/PIXTA)

警察庁が2023年6月22日に公表した資料において、2022年の「認知症による行方不明者」が1万8,709人と過去最高だったことがわかりました。背景として、認知症を患う人が増加しているのに加え、認知症の家族をもつ人の負担が重くなっていることが推察されます。日本には介護と仕事を両立する「休業とお金」の制度がありますが、利用率が著しく低いという実態があります。本記事ではそれらの制度について解説します。

「制度」はあるが…きわめて低い利用率

家族が認知症になり介護が必要となった場合、日本には、仕事と介護を無理なく両立させるための「休業とお金」の制度が2つあります。

 

・介護休業と介護休業給付金

・介護休暇(有給または無給)

 

いずれも法律上の制度なので、事業所にこれらの定めがなくても、労働者から申し出があった場合には、勤務先は拒むことが許されません。また、介護休業の取得を理由にその労働者に対し不利益な扱いをすることも禁じられています。

 

ところが、これらの制度はまだまだ活用されていないのが実情です。

 

すなわち、厚生労働省「令和元年(2019年)度 雇用均等基本調査」によると、2018年4月1日~2019年3月31日の間に介護休業を取得した労働者がいた事業所の割合は 2.2%にとどまっています。

 

したがって、まず、労働者がこれらの制度の利用を利用できる環境の整備が急務であるといえます。

 

以上を前提に、各制度について概説します。

「介護休業」と「介護休業給付金」

まず、「介護休業」および「介護休業給付金」の制度です。

 

介護休業は、家族1人につき93日を限度に、合計3回まで受給することができます。

 

この「93日・計3回まで」というのは、介護に関する長期的方針を決めるために必要な期間として想定されています。

 

そして、介護休業を取得する間、「雇用保険」から「介護休業給付金」を受給することができます。これは、給与の67%(約3分の2)を受け取れるものです。

 

◆非正規雇用の労働者にも認められる

介護休業の取得後介護休業給付金の受給は、正社員はもちろん、非正規雇用の労働者(パート、アルバイト、派遣社員等)にも認められます。ただし、以下の違いがあります。

 

【介護休業給付金を受給できる資格】

・正社員:引き続き雇用された期間が1年以上

・非正規雇用の労働者:労働契約の期間が、介護休業開始予定日から93日経過日から6ヵ月後までに満了することが明らかでない

 

◆取得要件・受給要件

介護休業を取得できる要件(介護休業給付金の受給要件)は以下の2つです。

 

【介護休業の取得要件(介護休業給付金の受給要件)】

1. 常時介護を2週間以上必要とする状態にある家族(配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)を介護するための休業であること

2. 期間の「初日」と「末日」を明らかにして事業者に申し出を行うこと

 

要件はあくまでも、家族が「常時介護を2週間以上必要とする状態」にあることで、実際に休業する日数は2週間未満でも構いません。

 

たとえば、複数人で手分けして合計2週間以上の休業をすることや、自分が休業しない期間に他の人に介護を依頼することもできます。

 

また、「常時介護を必要とする状態」は、以下のいずれかです(厚生労働省HP参照)。

 

【常時介護を必要とする状態】

・要介護2以上の認定を受けている

・【図表1】の状態(1)~(12)のうち、「2」が2つ以上、または「3」が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続している

 

厚生労働省HPより
【図表1】常時介護を必要とする状態の判断基準 厚生労働省HPより

 

なお、認知症の場合、特に、「(7)意思の伝達」、「(8)外出すると戻れない」、「(9)物を壊す、衣服を破る」、「(10)周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れ」、「(12)日常の意思決定」等が典型的にみられるものです。

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