どのくらいの相続税額が猶予されるのか
農地を相続した相続人が猶予される相続税額は次のように計算します。
「本来の相続税の総額(※1)-農業投資価格による相続税の総額(※2)=納税猶予税額(※3)」
例をあげて計算してみましょう。
(例)農業を営んでいた被相続人から、相続人である子A1人のみが農地を含め遺産全てについて相続した。
・相続人:子Aのみ
・農地評価額:8,000万円
・自宅評価額:5,000万円
・預金:2,000万円
・農業投資価格:1,000万円
(※1)本来の相続税の総額を計算
まず、農地評価額・自宅評価額・預金を合算します。
8,000万円+5,000万円+2,000万円=1億5,000万円
課税価格の合計額は1億5,000万円となり、今度は基礎控除額(相続人1人:3,600万円)を差し引きます。
1億5,000万円-3,600万円=1億1,400万円
本来の相続税の総額は次のように計算します。
課税遺産総額は1億1,400万円となるので税率40%を掛け、1,700万円を控除します(国税庁:相続税の速算表参照)。
1億1,400万円×40%-1,700万円=2,860万円
本来の相続税額は2,860万円です。
(※2)農業投資価格による相続税の総額を計算
まず、農地評価額・農業投資価格・預金を合算します。
8,000万円+1,000万円+2,000万円=1億1,000万円
課税価格の合計額は1億1,000万円となり、今度は基礎控除額(相続人1人:3,600万円)を差し引きます。
1億1,000万円-3,600万円=7,400万円
農業投資価格による相続税の総額は次のように計算します。
課税遺産総額は7,400万円となるので税率30%を掛け、700万円を控除します(相続税の速算表参照)。
7,400万円×30%-700万円=1,520万円
農業投資価格による相続税は1,520万円です。
(※3)本来の相続税額(※1)を農業投資価格による相続税額(※2)で差し引く
2,860万円-1,520万円=1,340万円
納税猶予税額は1,340万円となります。
適用条件について
相続税猶予制度を適用するには、被相続人・農業相続人・農地それぞれが条件に合致していなければいけません。
被相続人・相続人の条件
被相続人の場合は次のいずれかに該当している必要があります。
・死亡日まで農業を営んでいた
・死亡日まで特定貸付け、認定都市農地貸付け、農園用地貸付けのいずれかを行っていた
・生前に一括贈与をした
一方、農業相続人は次のいずれかに該当している必要があります。
・相続税申告期限までに農業経営を開始、引き続き農業をする
・相続税申告期限までに特定貸付けまたは認定都市農地貸付け等を行った
・被相続人から生前に一括贈与を受けた
農地の条件
農地は次のいずれかに該当する必要があります。
・相続で取得した農地等で遺産分割されている
・贈与税納税猶予の対象だった
・相続の年に生前一括贈与を受けていた
・被相続人が特定貸付け、認定都市農地貸付け、農園用地貸付けのいずれかを行っていた
免除の条件
相続税が猶予されても、納付は先送りしてもらっている状態といえます。しかし、一定の条件に合致すれば猶予されていた相続税は免除され、納税が不要となります。
免除の要件は、基本的に被相続人から農地を引き継いだ相続人が死亡した場合です。
その他にも、免除されるケースがあります。
・市街化区域の農地なら営農20年で免除:全国の市町村が該当。ただし、生産緑地・三大都市圏(首都圏・近畿圏・中京圏)の特定市を除く
・農業相続人が後継者に生前一括贈与したら免除
このように、相続人の亡くなる前に相続税が免除される場合もあります。