相続財産には「相続税がかからないもの」がある
生徒:先生、「相続税の非課税財産」というものがあると聞きました。具体的に教えてください!
先生:財産のなかには、相続税がかからないものがあります。これを「非課税財産」と言います。例えば、お墓やお寺で使うものは、たいてい税金がかかりません。ただし、非常に高額なお墓などには、税金がかかるケースもありますが。
生徒:墓地や仏壇は、一般的には非課税ということですね。
先生:ほかにも、障害がある人、またはその人を扶養する人に支給される給付金を受け取る権利(心身障害者扶養共済制度の給付金を受け取る権利)を受け継いだ場合、税金はかかりません。そして、幼稚園や養護学校を経営していた人が亡くなった場合、その幼稚園や養護学校の建物や土地にも、税金はかからないことがあります。
生徒:社会福祉のためですね。
★非課税になる相続財産はこちらをチェック
先生:あと、個人が所有している道路のことを「私道」と言いますが、その私道を多くの通行人が利用している場合には、税金が課税されません。
生徒:他人が自由に使うことができる土地だからですね。
先生:また、お金を寄付したり、公益団体に贈ったりする場合も、税金がかからないことがあります。ただし、どんな団体に寄付してもいいわけではなく、国や地方公共団体、公益法人に限られています。
生徒:寄付や贈与に税金がかかると、社会の役に立てようとする気持ちがおきなくなるからですね。
先生:亡くなった人の配偶者が、亡くなった人の家に暮らしていた場合、遺産分割協議がまとまるまでの間、もしくは配偶者が亡くなってから6カ月間は、無償で住み続けることができますが、その権利を「配偶者短期居住権」と言います。こちらにも税金はかかりません。
生徒:残された奥様が生活拠点を維持するために税金を払っては大変ですものね。
弔慰金、死亡保険金…一部に「非課税枠」がある財産も
先生:また「みなし相続財産」といって、一部が非課税となる財産があります。これは、本来の相続財産ではないけれど、相続税がかかることがある財産のことです。例えば、弔慰金や死亡保険金などが該当します。ただし、これらには非課税枠があります。
生徒:「非課税枠」って何ですか?
先生:非課税枠とは、ある一定の金額まで相続税がかからないことを意味します。例えば、亡くなった方が働いていた会社から遺族へ支払われる弔慰金には、一定の限度額まで非課税枠が設けられています。
生徒:死亡保険金にも非課税枠があるんですか?
先生:はい、死亡保険金にも非課税枠があります。500万円に法定相続人の人数をかけた金額までが非課税枠となり、その部分には相続税がかかりません。
生徒:死亡保険金の非課税枠を計算するとき、法定相続人の数にはどんな人が含まれますか?
先生:非課税枠の計算には、相続放棄をした人も含まれます。また、養子がいる場合は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人まで法定相続人の数に含めます。
★相続登記の義務化についてはこちらをチェック
【相続】相続登記の義務化の内容、費用、やるべきことを分かりやすく解説!
生徒:死亡退職金にも非課税枠があるんですか?
先生:そうです。死亡退職金も、生命保険金と同じように扱われます。500万円に法定相続人の人数をかけた金額までが非課税枠となり、その部分には相続税がかかりません。非課税枠を超えた部分には相続税がかかります。ちなみに、みなし相続財産には、損害保険の死亡保険金も含まれます。これにも非課税枠が適用されますが、計算方法は生命保険金と同様です。
生徒:非課税枠はどのように計算されるのですか? すべてのみなし相続財産を合計して、非課税枠を差し引くのでしょうか?
先生:いいえ。非課税枠は、それぞれのみなし相続財産ごとに適用されます。例えば、弔慰金には弔慰金の非課税枠が、保険金には保険金の非課税枠が適用されます。非課税枠を超える部分には相続税が課されます。非課税枠を超えた部分に相続税がかかるということは、その部分が相続税の対象となり、相続財産の金額が増えることを意味してますね。
生徒:よくわかりました! 先生、ありがとうございます。
岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士
★金の専門家が実際に行う資産運用方法についてはこちらをチェック
【プロのお金の増やし方】投資先は円安だから米国株?投資信託?お金の専門家が実際に行う資産運用方法を大公開!【第10話】