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相続財産には、相続税の課税対象となる財産と、課税対象とならない財産とがあります。相続税の課税対象となる財産には、民法で決められた本来の相続財産と、民法上では相続財産に該当しない財産でも、相続税上では相続財産とみなされるみなし相続財産などがあります。今回は、相続税が課される財産についてみていきましょう。FP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

相続税の課税対象となる財産には、どんなものがある?

生徒:先生、母親が亡くなったのですが、相続税について教えてください。相続税はすべての財産にかかるのでしょうか?

 

先生:いいえ。すべてにかかるわけではありません。相続財産には、相続税がかかる財産とかからない財産がありますよ。

 

生徒:どのような財産に相続税がかかるのでしょうか?

 

先生:相続税がかかる財産を相続財産というのですが、相続財産には、本来の相続財産だけでなく、「みなし相続財産」「相続時精算課税制度を適用した財産」「みなし相続財産に納税猶予制度を適用した財産」「相続開始7年以内の間に贈与した財産」などがあります。

 

★相続税の課税対象となる財産はこちらをチェック

相続税課税対象となる財産!本来の相続財産とみなし相続財産

「みなし財産」と「みなし相続財産」

生徒:なんだか難しくて、よくわかりません…。「みなし財産」というのはどういうものでしょうか?

 

先生:本来の相続財産とは、民法の決まりによって相続されたり、遺贈されたりした財産のことです。現金や預貯金、有価証券、土地、建物、自動車、書画骨董などがあります。また、著作権や特許権などの権利や、貸付金などの金銭債権もこれに該当しますよ。

 

生徒:目に見えない権利などは、私たち一般人が見つけるのは難しそうですね…。相続財産を見落とすと脱税になるんですか?

 

先生:そうですね。相続税がかかる相続財産を見落とすと、相続税の申告漏れになってしまいます。申告漏れになると、過少申告加算税の追加支払いという厳しいペナルティを課されることになりますから、相続税申告は税理士に任せたほうが安心ですよ。とはいえ、一番よく見落とされるのは「手許現金」ですけれどね…。

 

生徒:「手元現金」って、紙幣や硬貨ですよね? 見落とすことなんてあるのでしょうか。見つかれば明らかに相続財産だとわかりますよね。

 

先生:そうですね。亡くなった方の財布のなかに入れておいた現金とか、タンスの引き出しに保管していた現金だったら、すぐにわかりますね。でも「家族が預かっている現金」が見落とされるんですよ。

 

生徒:「家族が預かる」なんてあるのでしょうか?

 

先生:亡くなる直前は、ベッドで寝たきりになるケースが多いですよね。その場合、病院の医療費の支払い等のために、家族が寝たきりになった方の銀行口座から現金を引き出しておくことがあるんですよ。

 

生徒:なるほど!

 

先生:相続税申告のときに預金通帳を見ていると、亡くなる直前に、1日の引き出し限度額である50万円が連日出金された記録を見ることがよくあります。それらは、家族が現金として預かっていたり、家族が自分の銀行口座へ預け入れていたりするんです。これを「直前引出預金」「名義預金」などと呼ぶのですが、これは相続財産に含めておかなければいけないんですよ。

 

生徒:それは注意が必要ですね…。ところで、「みなし相続財産」というのはどういうものでしょうか。本来の相続財産とは何が違うのでしょう?

 

先生:みなし相続財産というのは、民法の相続財産ではないけれど、相続税がかかる財産のことです。相続財産とみなす、という意味で「みなし相続財産」というんですよ。例えば、死亡保険金や死亡退職金、個人年金などの定期金を受け取る権利などがありますよ。

 

生徒:そうなんですか! 相続財産ではないのに相続税がかかるんですね…。

 

★法定相続人の範囲についてはこちらをチェック

【相続】法定相続人の範囲と法定相続分を徹底解説

相続時精算課税制度を適用した財産

生徒:「相続時精算課税制度を適用した財産にも相続税がかかる」とのことですが、「相続時精算課税制度」とは何でしょうか?

 

先生:相続時精算課税制度というのは、被相続人が生前に取得した贈与財産を相続税の課税対象とする制度です。この制度を利用すると、生前に贈与した財産の金額の累計額が特別控除額の2,500万円を超えたら、超えた部分に対して、一律20%の贈与税を前払いすることになっています。この贈与財産も、相続時にはすでに贈与されて被相続人の手元には残っていませんが、相続財産に加算して相続税を計算することになります。その際に、前もって払っている贈与税がある場合は、贈与税の分を精算し、その差額を相続税として納めることになります。

 

生徒:なるほど。

 

先生:また法改正によって、2024年からは、2,500万円までの特別控除に加えて、年間110万円までの贈与が基礎控除として追加されます。この110万円には贈与税がかからず、相続財産としても加算されないため、相続税もかかりません。

みなし相続財産に納税猶予制度を適用した財産

生徒:「みなし相続財産に納税猶予制度を適用した財産」というものがありましたが、これは何でしょうか?

 

先生:これは、非上場株式の贈与税の納税猶予制度の特例の適用を受けて取得した株式のことです。親である会社経営者が、自分の会社の株式を子どもへ贈与したときに、税金がかからなくなるお得な制度なんですよ。ただし、この株式を相続財産に含めなければいけません。

 

生徒:結局相続税がかかるのなら、「税金がかからないお得な制度」だといえるのでしょうか…?

 

先生:税金をゼロにするためには、税金がかかるタイミングで、その都度、納税猶予制度を繰り返し使うことが必要なんです。だから、免除ではなく「猶予」というんですね。相続税がかかるときは、非上場株式の相続税の納税猶予制度の特例の適用を申請しなければいけなんです。

相続開始7年以内間に贈与した財産

生徒:それでは、「相続開始7年以内間に贈与した財産」というのはどういうものでしょう? 贈与税を支払ったら終わりではないのでしょうか。

 

先生:そうですね。令和5年度税制改正で、3年間から7年間に延長されたのですが、相続発生前の7年間のうちに贈与した財産は、相続財産に加算しなければいけないんです。もちろん、贈与税を支払っていたのなら、それは相続税から控除されますよ。

 

生徒:先生、今日はたくさん勉強になりました。ありがとうございました。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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