「認知症基本法」が成立…今こそ知っておきたい「認知症介護」と「仕事」を両立するための「3つの給付の制度」

「認知症基本法」が成立…今こそ知っておきたい「認知症介護」と「仕事」を両立するための「3つの給付の制度」
(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年6月15日、認知症に対する国や自治体の取り組みの理念・方向性を定めた「認知症基本法」が成立しました。そのなかで、「家族等の負担の軽減を図る」ことがうたわれています。今後、家族が認知症等で介護を必要とするようになった場合、介護と仕事を無理なく両立できるようにするための「給付」等の制度の活用がますます重要になっていきます。本記事では、現行の「給付」の制度について整理して解説します。

「介護休暇」と給与(無給の場合あり)

介護休業および介護休業給付金は、どちらかといえば、介護の初期段階、すなわち「介護に関する長期的方針を決めるために必要な期間」のための制度です。

 

その後も、家族の世話のほか、通院等の付き添いや、介護サービスの手続の代行、ケアマネジャーとの短時間の打ち合わせ等、家族の介護のために仕事を休まなければならないケースが考えられます。その場合には、「介護休暇」の制度を利用することになります。

 

介護休暇は、年次有給休暇と別枠で法律上認められたものであり、家族1人につき年間最大5日間、取得できます。また、1時間単位で取得することもできます。

 

労働者から申し出があった場合には、勤務先は拒否できません。また、介護休暇の取得を理由として不利益な扱いをすることも禁じられています。

 

ただし、以下の労働者は対象外です。

 

・入社6ヵ月未満の労働者

・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

 

また、有給か無給かは勤務先の規定によります。これが、介護休業との大きな違いです。無給の場合は、有給休暇を先に消化することで対応せざるをえないと考えられます。

企業に対する「助成金」の制度

これらの制度を利用するには、いずれも、勤務先の理解と協力を得ることが必要です。しかし、特に、人員がが限られている中小企業においては、介護休業を取得する従業員の穴を埋めるのに苦慮してしまうことが考えられます。

 

そこで、中小企業に対する「両立支援助成金(介護離職防止支援コース)」の制度があります。

 

【両立支援助成金(介護離職防止支援コース)の主要な2類型】

1. 介護休業:介護支援プランに基づき、介護休業・介護休暇を取得し、または復帰した者が出た場合(介護休暇・休業5日以上取得)

2. 介護両立支援制度:仕事と介護との両立に資する制度を整備し、それを利用した者が出た場合(制度利用日数20日以上)

 

「2. 介護両立支援制度」の例としては、以下が挙げられます(厚生労働省HP参照)。

 

【介護両立支援制度の例】

・所定外労働の制限制度

・時差出勤制度

・深夜業の制限制度

・短時間勤務制度

・介護のための在宅勤務制度

・法を上回る介護休暇制度

・介護のためのフレックスタイム制度

・介護サービス費用補助制度

 

金額は【図表2】の通りです。

 

厚生労働省HP「2023年度の両立支援等助成金の概要」より
【図表2】中小企業を対象とした両立支援助成金「介護離職防止支援コース」支給額 厚生労働省HP「2023年度の両立支援等助成金の概要」より

 

まず、介護休業を取得させた場合は、休業取得時と職場復帰時に1人あたり30万円を受給できます(それぞれ1年度5人まで)。業務を代替する人員を確保した場合は、代替要員を新規に人を雇用したら20万円、既存のメンバーに手当を支給したら5万円を受け取ることができます。

 

次に、介護両立支援制度を利用させた場合には、1人あたり30万円受給できます(1年度5人まで)。

 

さらに、いずれも、資料を用いて説明するなどして個別に周知し、雇用環境の整備に努めたことによる15万円の加算があります。

 

今後、ますます高齢化が進むなか、家族が認知症になり、働きながら介護しなければならなくなるケースがますます増大していくことが想定されます。認知症基本法が成立した今、本記事で紹介した制度のさらなる拡充が今後の課題であるといえます。

 

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