「認知症基本法」が成立…今こそ知っておきたい「認知症介護」と「仕事」を両立するための「3つの給付の制度」

「認知症基本法」が成立…今こそ知っておきたい「認知症介護」と「仕事」を両立するための「3つの給付の制度」
(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年6月15日、認知症に対する国や自治体の取り組みの理念・方向性を定めた「認知症基本法」が成立しました。そのなかで、「家族等の負担の軽減を図る」ことがうたわれています。今後、家族が認知症等で介護を必要とするようになった場合、介護と仕事を無理なく両立できるようにするための「給付」等の制度の活用がますます重要になっていきます。本記事では、現行の「給付」の制度について整理して解説します。

「給料の3分の2」を受け取れる「介護休業給付金」

まず、サラリーマン(会社員・公務員)が家族の介護のために介護休業を取得した場合の「介護休業給付金」の制度があります。

 

これは、サラリーマンが加入する「雇用保険」の被保険者が、給与の3分の2(約67%)を受け取れるものです。

 

介護休業は家族1人につき93日を限度として、計3回まで受給することができます。この「93日・計3回まで」という長い期間は、介護に関する長期的方針を決めるために必要な期間と想定されています。

 

法律上の制度なので、労働者から申し出があった場合には、勤務先は必ず休業させなければなりません。また、介護休業の取得を理由として不利益な扱いをすることも禁じられています。

 

◆介護休業給付金の受給要件

介護休業給付金の受給要件は、2つの条件をいずれもみたすことです。

 

【介護休業給付金の受給要件】

1. 常時介護を2週間以上必要とする状態にある家族(配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)を介護するための休業であること

2. 期間の初日と末日を明らかにして事業者に申し出を行うこと

 

配偶者は、「事実婚状態」も含みます。

 

また、家族が「常時介護を2週間以上必要とする状態」であればよく、実際に休業する日数は2週間未満でも差し支えありません。たとえば、家族の介護をするために複数人で合計2週間以上の休業をする場合や、自分が休業しない期間について他の人に介護を依頼する場合も認められます。

 

常時介護を必要とする状態は、以下のいずれかです(厚生労働省HP参照)。

 

【常時介護を必要とする状態】

・要介護2以上の認定を受けている

・【図表1】の状態(1)~(12)のうち、「2」が2つ以上、または「3」が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続している

 

厚生労働省HPより
【図表1】常時介護を必要とする状態の判断基準 厚生労働省HPより

 

認知症の場合、特に切実な問題となるのが、「(7)意思の伝達」、「(8)外出すると戻れない」、「(9)物を壊す、衣服を破る」、「(10)周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れ」、「(12)日常の意思決定」等です。

 

◆介護休業給付金の受給資格

介護休業給付金の受給資格の要件は、正社員と非正規雇用の労働者(パート、アルバイト、派遣社員など、期間の定めのある労働者)とで異なり、以下の通りです。

 

【介護休業給付金の受給資格の要件】

1. 正社員:引き続き雇用された期間が1年以上

2. 非正規雇用の労働者:労働契約の期間が、介護休業開始予定日から93日経過日から6ヵ月後までに満了することが明らかでない

 

このうち、非正規雇用の労働者については、以前は「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件が要求されていましたが、制度改正により2022年4月1日から撤廃されました。

 

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