投資初心者、まず最初に意識したいのは「目的の明確化」
株式投資を考える人が最初にすべきなのは、なんのために投資をするのか、ということです。老後資金を増やしたいということであれば、なるべくリスクの小さい運用がいいでしょうね。リッチな老後を夢見てハイリスク・ハイリターンの投資をしたら失敗して惨めな老後を過ごした、などというのは嫌でしょうから…。
その場合、
「預金はインフレに弱いから、インフレに強い資産である株式も持っておきたい」
「とはいえ、暴落のリスクは避けたい」
ということでしょうから、数多くの銘柄を持ち、しかも時間をかけて少しずつ買っていくように心がけたいですね。
そうすれば、暴落する銘柄があってもほかの銘柄で取り返せるでしょうし、高いときも安いときも少しずつ買うことになるので、大儲けもできないかわりに大損も避けられますから。それを狙うなら、投信の積立投資が便利で安心ですが、個別株投資をする場合にも、銘柄分散と時間分散をしっかり心がけましょう。それ以外にも留意点があるので、後述します。
「値上がりしそうな個別株を狙って買い、大儲けをしたい」
ということなら、成長企業の株を少数選んで集中的に投資することになると思います。もっとも、その場合はくれぐれも小遣いの範囲内で遊ぶだけにして、老後資金を注ぎ込まないように注意しましょう。
自社株を買って勤務先に忠誠心を示したい、あるいは従業員持ち株会に加入すると多額の報奨金が受け取れるので加入したい、ということであれば、自社株を買うのもいいでしょう。もっともその場合にも、以下のようなリスクがあることは認識しておきたいものです。
「自社株は様子がわかる→投資しやすい」がはらむ危険性
個別株を買うためには、企業についての知識と情報が必要です。会社員は勤務先の情報は豊富に持っているでしょうし、親しみを感じている場合も多いでしょうから、自社株を買いたくなる気持ちはわかります。
しかし筆者は、原則として自社株買いはお勧めしません。なぜなら、リスクが大きすぎるからです。勤務先が発展すればボーナスも増えるし持ち株も値上がりして大儲けですが、勤務先が衰退すればボーナスも減るし持ち株も値下がりして大損です。
万が一勤務先が倒産してしまえば、仕事も退職金も持ち株も一気に消滅してしまい、悲惨な生活が待っているわけです。
自社に関しては情報が豊富だとはいえ、反対に贔屓目に見てしまう可能性もあるわけで、その面でも自社株買いはお勧めできないというわけですね。
リスク分散の観点から「異業種株」のほうが好ましい
自社株買いは危険だ、ということで、ライバル社の株を買っている友人がいました。「我が社が不振になるのはライバルとの競争に負けたときだから、ライバル社の株を持っておけばリスク回避ができる」というわけです。
加えて、ライバル社に関する情報は、自社ほどではなくても、豊富に得られますから、投資したくなる気持ちもわかります。
よく考えて投資している、と感心して見ていたのですが、結果は悲惨でした。業種ごと構造不況業種になってしまったからです。
要するに、投資をするときには似たような株を買ってはいけない、ということなのですね。その意味では、業種が違っても輸出関連企業の社員が輸出関連企業の株を買うのは避けたほうがよいでしょうね。できれば輸入関連企業の株を買うのがお勧めです。
勤務先の話をはなれて、輸出企業の株と輸入企業の株を両方持つ、というのは選択肢でしょう。円高になって輸出企業の株が下がったときには、輸入企業の株価が上がって穴埋めしてくれることが期待できるからです。
プロと同じ土俵で戦い、簡単に勝てるわけがないので…
個別株投資をしたいという人は「自分は投資がうまいから、平均株価よりも儲けることができる」と思っているかもしれませんが、それは危険なことです。
株式市場はプロとアマが対等な条件で闘っている場所です。プロでさえも簡単には儲けられないのに、アマが簡単に儲けられるはずはありませんから。
大手企業に関する情報は、プロたちの方が圧倒的に多く持っているでしょうし、分析能力もプロの方がはるかに上でしょう。彼らに勝てるとは思わないことです。
タイミング的にも、株価が上がると急いで買わなければと買い急いで高値掴みをし、暴落すると狼狽売りをしてしまう初心者は多いのです。
もっとも、悪い話ばかりではありません。株式の長期投資は期待値がプラス(確率的には儲かりやすい)のです。プロに勝てなくても、預金よりマシな結果になる可能性は高いのです。期待値については拙稿『銀行預金〈ゼロ金利+インフレ〉で実質目減り…経済評論家が「株の長期投資」をお勧めするワケ』を併せてご参照いただければ幸いです。
自信過剰にならずに、本稿の留意点をよく考えながら、頑張って投資をすれば、きっといい結果が得られると期待しましょう。
本稿は以上ですが、投資は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。
塚崎 公義
経済評論家
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