実弟が病弱の母の財産を一切開示せず、困っている
相談者は、1ヵ月前に三人兄弟の二番目の実弟Aから「老人ホームに住む母が認知症による体力低下で入院したが、病院側の判断でコロナ感染防止のためしばらく面会できない状態にある」との連絡を受けました。
実弟のA、そして母親とは3年以上会っておらず、相談者は突然の連絡に驚いたといいます。いろいろ気になることもあり、今後のことを聞いても実弟Aは、「後のことは全て自分がやっておく」の一点張り。
不審に思った相談者が通帳のことなどを聞いた途端、「あなたに教える必要は無いし母は自分と三番目の実弟Bにだけ相続すると言っていた」と興奮ぎみにまくしたてたそうです。
遺言状の有無は確認しませんでしたが、相談者が遺留分を主張するとさらにボルテージが上がり、逆上したといいます。
相談者は、過去に母親と相談者が代表を務める会社で金銭上の疑義・トラブルが発生して以来、5年近く音信不通状態でした。実弟Aは母親を騙して不動産を抵当に入れさせ、銀行からお金を引き出させたり、偽物商品を大量に販売したりした罪で起訴された過去があります。
相談者としては、実弟Aと母親の関係が健全な状態とは到底思えず、この先、心配でなりません。
幸い母親の体力は回復したとのことですが、母親は資産管理並びに相続等に関してはほとんど知識が無く、その点もとても不安です。
そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。
(1)実弟Aが資産状況を一切開示しないが、打開する何かいい方法はないのか。
(2)成年後見人制度を活用したいが、相談者だけで手続きは可能なのか。可能な場合の注意点はどんなことか。それを弁護士に依頼した場合の費用はいくらぐらいか。
「親元に留まった子ども」と「親元を離れて都会に出た子ども」との対立
私も相続事件や成年後見人を数多く手掛けていますが、親の財産の管理や亡くなった後の相続に関して、「親元に留まった子ども」と「親元を離れて都会に出た子ども」との対立になる案件がかなりあります。
親元に留まった子ども(多くは長男です)は「俺も本当は都会に出たかったけれど、親元に留まって親の介護もしたし屋敷や田畑の管理もしている、だから俺が親の財産をある程度の裁量をもって管理するのが当然、他の兄弟には口を出させん!」みたいな、あるいは親が亡くなってからは他の兄弟より多めに相続しても当然、と考えがちです。
一方で都会に出た次男次女以下の兄弟は、長男が独占的に行っている親の財産管理が気になりますし、相続に関しては「俺らは早くに都会に出されて苦労したけど、兄ちゃんは親元で大学まで出してもらったし、親から色々と援助を受けている。だから俺らの方が多めにもらいたい!」みたいな考えになりがちです。
そのあたりを調整するのが、我々弁護士の役目なのですが。
相談の事例の場合
さて、ご相談の事例ですが、お母さんが認知症となり、また実弟Aにそのような過去があれば、相談者の方はお母さんの財産管理が心配になるのは当然です。
現在は実弟Aがお母さんの財産の管理をしているようですが、たとえ近くにいるからと言って、実弟Aがお母さんの財産管理をする権限があるわけではありません。
また実弟Aの「母は自分と三番目の実弟Bにだけ相続すると言っていた」という発言も、遺言がなければ意味がありませんし、仮にお母さんがそのように言ったとしても、生前の財産管理の話と死後の相続の話は全く別ものです。
この場合は、やはり速やかに成年後見人の選任を裁判所に申し立てて、裁判所に公平中立な成年後見人を選任してもらうのがよさそうです。