(※写真はイメージです/PIXTA)

相続問題といえば「争い」といっていいほど、ドロドロした関係が露骨に表出してくるものです。相続人にとっては「自分こそがもらう価値のある人間」と思うのでしょうか。血縁があるからこそ、そんな歪んだ思いが湧くとすれば、相続とは何とも罪なものです。実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、兄弟間の相続トラブルにおける解決のポイントについて、北條将人弁護士に解説していただきました。

成年後見制度は、認知症やその他の精神的な障害により自分の財産を適切に管理したり法的な手続ができなくなった場合に、成年後見人等が本人にかわって財産管理・契約締結等を行う手続きです。

 

成年後見制度には大きく分けて「任意後見」と「法定後見」というものがあります。

 

任意後見は将来認知症等になった場合に備えて、本人があらかじめ任意後見人を選んでおく制度ですが、ご相談の事例はお母さんが既に認知症になられているようですので、任意後見の方は利用できません。

 

従って「法定後見」、つまり親族等の申出により家庭裁判所が適当な成年後見人等を選び、その成年後見人等が本人の財産管理等を行う、という手続きをとることになります。

 

法定後見には本人の判断能力の程度に応じて「補助」、「保佐」、「後見」と3つのメニューが用意されています。この中で本人の判断能力が著しく衰えてしまった場合には「後見」が該当し、成年後見人が選任されることになります。

 

ご相談の事例において成年後見人が選任された場合、お母さんの財産管理権限は成年後見人が有することになりますので、通帳等の保管・管理は成年後見人がすることになります。

 

実弟Aが成年後見人への通帳の引渡しを拒んでも、成年後見人はお母さんの預金がある金融機関と協議をして、新たに通帳を発行してもらえます。

 

その上で実弟Aの勝手な預金引き出し等の不適切な財産管理があれば、成年後見人が実弟Aのお金の返還を要求し、訴訟となることもあります。とにかく実弟Aが勝手なことをする前に、家庭裁判所に速やかに成年後見人を選んでもらうことが大切です。

 

成年後見人の選任申出は、本人、配偶者、四親等内の親族(親子、兄弟、叔父叔母、甥姪、いとこなど)等ができます(民法7条)。したがって、たとえ実弟Aが成年後見人をたてることに反対でも申し立てはできます。

 

注意点としては、一旦家庭裁判所に後見開始等の申し立てをすると、取り下げるには裁判所の許可が必要となりますので、簡単には取り下げられないということです。

 

また一旦開始された成年後見自体を取りやめたり、成年後見人を交代させることも法律で厳格に定められた事由がない限り認められません。その点を充分に留意して申立を行っていただきたいと思います。

 

弁護士費用については弁護士それぞれが取り決めていますので、この場では明確に申し上げられません。

 

ただ、収入や貯金の金額が一定の基準以下の方は日本司法支援センター(法テラス)が弁護士費用や実費を立て替えるという制度がありますので、詳しくは法テラスのホームページでご確認ください。

積極的に成年後見制度の利用を検討

成年後見人は本人の親族が選任されることもありますが、ご相談の事例のように本人の財産管理に関して親族間で対立があるような場合には法律・福祉の専門家(弁護士など)その他の第三者が選任されることが多いようです。

 

第三者が選任された場合、親族としては成年後見人とうまくコミュニケーションをとって本人の財産管理が適切になされ、本人が安心して暮らせるように協力することが大切です。

 

この点、最近は成年後見制度に対する批判的な報道をみかけます。

 

曰く「使い勝手が悪い」、「後見人が必要なことをしてくれない」、「後見報酬が高い」等々。確かに成年後見制度は、より使い勝手を良くするような改革は必要でしょう。

 

ただ、そのような批判の中では制度に関する誤解や成年後見人とのコミュニケーション不足、意思疎通の齟齬があるのではないかと思われるものもあります。

 

2025年には団塊の世代が後期高齢者に突入し、今後高齢者の財産管理はより重要な課題となると考えられます。

 

成年後見制度は利用されることにより課題も見えてくるでしょうし、その中で改革もあるかと思いますので、ご高齢のご家族がおられる方は、積極的に成年後見制度の利用を検討されてよいかと思います。

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