(※写真はイメージです/PIXTA)

2022年7月7日から侮辱罪が厳罰化され、すでに改正法が施行されています。この改正には、2020年5月のテレビ番組出演中の女子プロレスラーがX(旧Twitter)上で誹謗中傷され、命を絶った事件が大きく影響しています。では、厳罰化前の誹謗中傷も、厳罰化後の法定刑が適用となるのでしょうか? Authense法律事務所の弁護士が解説します。

誹謗中傷に対応する法的手段

誹謗中傷への法的対応策は、侮辱罪として刑事告訴をすることのみではありません。では、SNS上などで誹謗中傷を受けた場合、これに対応するための法的手段にはどのようなものがあるのでしょうか? 主な対応方法は次のとおりです。

 

刑事告訴する

1つ目の対応策は、侮辱罪や名誉毀損罪など、その侮辱行為が該当する罪で刑事告訴をすることです。ただし、刑事告訴をしたからといって、すぐに警察が告訴を受理してくれるわけではないことは知っておきましょう。

 

また、匿名の相手に誹謗中傷をされた場合において、その相手を警察側が特定してくれるかどうかは事案や警察の対応次第ですそのため、あらかじめ発信者情報の開示請求などを行い、相手が誰であるのかを特定したうえで刑事告訴をすることが推奨されます。

 

なお、発信者情報の開示請求とはSNS運営企業などやプロバイダに対して投稿や相手の情報を開示するよう請求することですが、任意に開示に応じてくれることは多くはありません。そのため、裁判所の手続きを利用することが一般的となっています。この開示請求を自分で行うことは容易ではありませんので、ご希望の場合には弁護士へご相談ください。

 

書き込みの削除請求をする

2つ目の対応策は、SNS運営企業などやインターネット掲示板の管理者などに対して、書き込みの削除請求をすることです。ただし、削除請求は慎重に行わなければなりません。なぜなら、書き込みが削除されれば証拠が1つ消えてしまうため、適切に証拠保全をしていないと、後の刑事告訴や損害賠償請求が困難となってしまうためです。

 

そのため、誹謗中傷に対して刑事告訴や損害賠償請求をしたいと考えているのであれば、適切な証拠保全を行ってから削除請求する方がよいでしょう。

 

損害賠償請求をする

3つ目の対応策は、誹謗中傷をした相手に対して損害賠償請求をすることです。損害賠償請求は民事上の概念であり、刑事告訴とはまったく別の請求です。つまり、仮に相手に対して損害賠償請求が認められたからといって、相手に前科がつくわけでもなければ、警察や検察が関与するわけでもありません。

 

また、ある誹謗中傷が犯罪に該当するかどうかと、それに対する損害賠償請求が認められるかどうかという判断基準は重なる部分が多いものの、まったく同じというわけではありません。たとえば、社会的評価を低下させられたとは認められなくても、名誉感情を傷付けられた場合において、これに刑事罰に問うことは困難ですが、民事上の損害賠償請求は認められる可能性があります。

 

この判断には専門的な知識や経験が必要となりますので、まずは弁護士へご相談いただいたうえで、対応方法を検討するとよいでしょう。

まとめ

侮辱罪が厳罰化されたことにより、今後多少の抑止効果は期待できることでしょう。しかし、誹謗中傷の被害を減らすためには、これだけでは不十分です。今後は刑事罰の対象を内部的名誉などにまで広げていく対応が求められるのではないでしょうか。誹謗中傷への対応は、時間との勝負です。そのため、できるだけ早期にご相談いただくことをおすすめします。

 

 

 

Authense 法律事務所

 

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