投資のプロが提案する「第3の選択肢」
――米国の株式市場ではグロース株を中心に捉えたほうがよいのでしょうか?
穂谷「そうとも言えません。長い目で見た際はグロースとバリューのどちらが勝者とも断定できないのです。それに、いずれかの投資スタイルを起点に長期的な運用を考えていてはあまり得策ではありません」
――つまり、サステナブル(持続可能)ではないということですね。それでは、投資企業を選ぶ際には、どのような観点が大切だと思われますか?
穂谷「資産形成を考える上で重要なことは、投資している企業の価値が向上することです。つまり、冒頭の株価の数式でいえば、倍率ではなくて利益が伸びるかどうかが肝心です」
――グロースとバリューは対立軸で捉えがちですが、確かにいずれも利益が伸びなければ企業価値は上がりませんよね。
穂谷「そうですね。利益の成長を見込むには企業の質、つまりクオリティに注目するべきだと思います」
――クオリティの高い企業の条件を聞かせてください。
穂谷「『ディフェンシブ』、『ポジティブ』という2つの側面を持ち合わせている企業です。[図表4]をご覧ください。
『ディフェンシブ』な側面とは財務体質が良い、つまり健全であること。金利負担が少なく倒産のリスクが低い会社です。『ポジティブ』な側面とは、営業キャッシュフローが安定していること。成長の種である設備投資に資金を回せる会社です。
こうしたクオリティ企業は、景気減速下で特に評価される傾向があります。
――景気減速期にクオリティ企業が選好されるのはなぜですか?
穂谷「倒産しにくい企業が選ばれるという側面と、継続的に設備投資ができる会社は、中長期的に見ると、競合他社と業績面で大きな差をつけることができると考えられるからです。
――確かに不確実性が高い時期は、クオリティ企業への評価が上がりそうです。バリューかグロースかといった判断だけではなく、企業のクオリティで選別する投資戦略やファンドを重視していきたいですね。
<<<【AB’s Market Tips】#5 バリュー?グロース?いや、クオリティだ!>>>
穂谷 栄一郎
アライアンス・バーンスタイン株式会社
運用戦略部/責任投資推進室 シニア・インベストメント・ストラテジスト
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