3月に相次いだ欧米銀行の破綻…いったいなぜ?
――相次ぐ銀行破綻に驚愕しています。なぜ、こうした事態が起きてしまったのですか?
荒磯「根本を探っていくと、どうやら急速に利上げを進めてしまったのではないか、そこに行き着くように感じます。銀行はお金を預かり、そのお金を運用するわけですが、そこで損が出たというところから不安が広がりました」
――なにか、リスクの高い運用をしていたということでしょうか?
荒磯「そういうことではないようです。[図表1]をご覧ください。米国が利上げを始めた2022年3月以降の株式や債券の騰落率をみると、軒並み下落していることがわかります。安全資産といわれる米国国債ですらマイナス・リターンとなり、“資金の逃げ場がなかった”というのが本当のところでしょう」
――クレディ・スイス銀行への飛び火も同じ理由からなのでしょうか。
荒磯「これには複合的な背景があると思っています。というのも、クレディ・スイス銀行は数年前から投資の損失が膨らみ、また内部文書が流出するといったガバナンス上の問題も指摘されてきました。ですから、金融市場がちょっと不安定になってきたときに『次はここが危ないのではないか』という不安が増幅したのだと思います」
――AT1債券(金融機関の破綻を防ぐために強制的に元本が削減される特性を持つ債券)が無価値化してしまうなど、当局の対処に余裕がなかった印象があります。
荒磯「スイスの金融当局も、1週間前に米国の西海岸で起きたことが、よもや自分たちの足元に飛び火するとは思っていなかったのではないでしょうか。ただ、この状況を見過ごし対応を誤ると金融危機が広がると判断し、一部の債券を犠牲にしてでも急ぎ救済策をまとめる必要があったのではないかとみています」
――異例の決断が下されたということですね。