「2,500円の原価割れ」なのに「3,500円の利益」が出るのはナゼ?決算書類からは絶対に読めない「納得の理由」【公認会計士が解説】

「2,500円の原価割れ」なのに「3,500円の利益」が出るのはナゼ?決算書類からは絶対に読めない「納得の理由」【公認会計士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

経営者・ビジネスマンにとって「会社の数字を意識して動けるか」は非常に重要ですが、それは「決算書類を読める」こととはまったく違います。本記事では、「IT」に精通した公認会計士で、会社の利益の最大化という見地からの「会社の数字」の読み方を提唱する金子智朗氏が、著書『管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング』(PHP研究所)から、「会社の数字」の合理的な読み方を解説します。

限界利益がプラスなら受注した方がいい

ここまでの話を少し理論的に一般化しておきましょう。

 

受注することによって追加で得られる利益3,500円は、売上高から「直接材料費」という変動費だけを引いた利益になっています。この利益を「限界利益」と言います。

 

式で書くと次の通りです。

 

限界利益=売上高−変動費

 

限界利益の「限界」という言葉は分かりにくい日本語だと思います。

 

ここでの「限界(的)」という言葉は、「変動的・追加的」というニュアンスを持った言葉です。

 

ちなみに、全くの余談ですが、なぜ「限界」などという言葉が使われているかというと、極限(=限界)における微小な変化を表す微分の考え方が背景にあるからです。だから、「変動的・追加的」というニュアンスになるのです。

 

数学がお得意な人は、こういう説明のほうがむしろ腑に落ちるかもしれませんが、「ビブン!?」と思われた人は、完全にスルーしていただいて結構です。

 

微分などという小難しい話よりも重要なことは、「限界利益」の変動の仕方です。

 

「限界利益」は、その変化の仕方が売上高の変化に正比例するように変動します。正比例とは、売上高が10%増えれば「限界利益」も10%増え、売上高が倍になれば「限界利益」も倍になるということです。

 

決算書に登場する「利益」はそうはいきません。「営業利益」も「経常利益」も「当期純利益」も、売上高の変化に対して正比例することは一般的にありません。なぜならば、どこかで知らないうちに固定費が引かれているからです。

 

「売上総利益」だけは、業種によっては正比例するとみなせる場合もありますが、少なくとも製造業ではやはりダメです。「売上原価」の元となる「製造原価」に相当程度の固定費が含まれているからです。本ケースがまさにそれです。

 

本ケースに話を戻しましょう。

 

ここで重要なことは、「限界利益」が3,500円とプラスであることです。「限界利益」がプラスということは、受注しないより受注した方が変動的・追加的利益がプラスということです。

 

ですから、受注しないより受注した方がいいという判断になります。

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管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

管理職3年目までに「会社の数字」に強くなる! 会計思考トレーニング

金子 智朗

PHP研究所

その仕事は外注すべきか、値下げすべきか、この事業から撤退すべきか。 合理的、戦略的に判断をくだす「数字で考える」トレーニング

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