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6月1日までに合意に至らずとも「問題なし」?

6月に入って、仮に、償還期日に元利金が入金されなくとも、大きな問題にはならないとみられます。なぜなら、後日、債務上限が引き上げられたあとに「value dateでの入金」が実行される(とみられる)ためです。

 

「value dateでの入金」とは、日付をさかのぼって入金された体裁となり、帳簿上も実際にもなにごともなかったことになる処理のことです。

 

たとえば「6月15日が償還日」で、その日には入金されず、実際には「6月22日」に入金された場合でも(財務省がその間に発生する利息やバック・デートにかかる手数料を銀行に支払うことによって)処理日付は「6月15日」とされます。逆に、実際に入金があった「6月22日」のままにしてしまうと、米国政府は債務を期日どおりに履行しなかったことになります。

 

「value dateでの入金」がなされれば、投資家の損失は機会損失も含め、限定的になります。

 

たとえば、財務省から受け取る償還金を元手に、①同日付で新たな債券(社債やMBSなど)を買い入れる約定を入れていたり、②同日付で調達していた資金を返済する期日になっていたりすると、いったんはそれぞれ、①買い入れが成立しない(=フェイル)、②資金の返済ができない状態が生じます。

 

しかし、後日、債務上限の引き上げとともに、米国債の償還金は(帳簿が日付をさかのぼって操作されて)「もとの償還日日付での入金」として調整されるため、①の買いは(あとあとになって)期日どおりでの買い入れ決済となってその間の経過利息も得られ、②の返済は(後々になって)期日どおりの返済となり、返済先から延滞利息を求められる事態には陥りません。

デフォルトが起こった場合の「リスク」

買い手が減少し、リスク資産「下落」の恐れ

上記のとおり、米国債や米国政府の信用力や徴税能力に問題が生じたわけではなく、日付についても「なにもなかった」ように後日処理されるはずですし、おそらく問題は短期間に留まるとみられます。

 

とはいえ、たとえ短期間でも、実際にデフォルトが生じる際には、あるいは「6月1日をまたぐ」際には、特にリスク資産を売却する動きが拡大し、他方で、それらのリスク資産について買い手に回る投資家が減ることから、流動性が枯渇して株式などのリスク資産が大きく下落するとみられます。たとえ、価格が割安でも「いったんは売却しよう」という流動性を求める動きが強まります。

 

米国債については、償還期日が近い現物が避けられ、これらの利回りがさらに上昇する可能性があります。たとえ、「value dateでの入金」となると信じていても、さまざまな手間が生じる可能性があり、忌避されます。

 

ただし、償還日がたとえば「今から6ヵ月後以降」といった、やや先の米国債については逆に、利回りが大幅に低下する可能性も考えられます。

 

2011年8月の米国債格下げ時に似た動きです。当時は、同年8月2日に米議会が債務上限の引き上げに合意した直後の同5日にS&P社による格下げが生じました。「米国の債務上限問題でむしろ米国債が買われる」事態でした。

 

当時はその後に、米政府や米議会と、格付け機関との間で「複雑なやりとり」が生じたために、(想像ですが)おそらく今回は格下げといったアクションは取られないとみられます。

 

[図表5]米国債イールドカーブ
[図表5]米国債イールドカーブ

 

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