(※写真はイメージです/PIXTA)

2023年3月。米国のシリコンバレー銀行が経営破綻したという第1報が飛び込んでからわずか1週間ほどで、今度はスイスのクレディ・スイス銀行をUBSが救済するというニュースが飛び込んできました。銀行セクターでの相次ぐ破綻に、リーマン・ショックを思い出した方も多いはず。はたして金融危機の再来となるのか、世界有数の資産運用会社、アライアンス・バーンスタイン(以下AB)のシニア・インベストメント・ストラテジスト、荒磯亘氏が解説します。

“リーマン・ショック再来”の声も…今後の展開は

――これからも金融危機への不安はくすぶるのでしょうか?

 

荒磯「リーマン・ショックの再来を心配する声はあります。たしかに似た雰囲気もあるのですが、よく分析していくと、少し違う面が見えてきます。危機が起きるときには、“特定のセクターにいったんお金が集中する”というパターンがあります。その後に、たまった債務が一気に崩れていくプロセスが典型例です」

 

――では、今回はどうなのでしょうか?

 

荒磯「[図表2]は、米国の経済主体別に債務の伸びを示したものです。1990年代から2000年初頭にかけたテックバブルでは、債務が金融機関に集中しています。

 

過去の分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。 期間:「銀行再編~テックバブル」は1991年3月末から2001年3月末、「リーマンショック前」は2001年9月末から2007年12月末、「リーマンショック以降」は2009年3月末から2022年9月末で算出。 出所:BEA(商務省経済分析局)、ブルームバーグ、AB
[図表2]米国経済主体別債務/GDP比率の伸び 過去の分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
期間:「銀行再編~テックバブル」は1991年3月末から2001年3月末、「リーマンショック前」は2001年9月末から2007年12月末、「リーマンショック以降」は2009年3月末から2022年9月末で算出。
出所:BEA(商務省経済分析局)、ブルームバーグ、AB

 

それが崩れたことで米国では銀行の再編が進み、メガバンクが誕生しました。リーマン・ショックでは、サブプライムローンなどの債務を抱える個人や証券化商品を大量に組成や保有していた投資銀行の債務が目立ちましたが、リーマン・ショック以降は金融機関の債務は減っています。厳しい金融規制が課せられ、銀行の財務は全体的には健全化しているのです。一方で、コロナ対策が理由となって政府部門の借金が膨らんでいます。

 

――今回の一連の騒動では、信用不安は急速に波及していくのだと実感しました。金融危機を防ぐため、政府当局にはスピード感を持って正しく対処してもらいたいものです。うまく対応していけそうでしょうか?

 

荒磯「政府部門には多額の債務があり、リーマン・ショック時と比べ財政出動や税金投入といった対策が講じにくい点はあるでしょう。ただ、その点は楽観的にみています。これまでの危機を踏まえて、なにをするべきかという対応策をあらかじめ想定している印象です。

 

シリコンバレー銀行で破綻の話が出た際に、預金の全額保護や銀行向けの緊急貸し出しを実施したのも、その表れです」

 

――そもそも、米国の利上げが要因だったのであれば、今後は打ち止めに動いていくのでしょうか。

 

荒磯「利上げ継続という選択肢は難しくなってきたと思っています。なぜなら、今回問題が起きたのが銀行セクターだったためです。銀行が財務の健全性を維持しようとして、今後の貸し出しを渋ると、経済全体にお金が回らなくなってしまいます。

 

おのずと景気過熱へのブレーキが踏まれていくと思いますので、中央銀行が無理して利上げをしなくてもよい環境になってきたのではないでしょうか」

 

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【ご注意】
※本稿は、「【AB’s Market Tips】#6 欧米の銀行破綻、果たして金融危機なのか?」を参考に再編集したものです。詳細については当該動画をご覧ください。
本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタインポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
当資料は、2023年4月14日現在の情報等を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が編集した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。
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