(※写真はイメージです/PIXTA)

高学歴な若者はESGとの相性が良く、ESGの推進に積極的な企業には世界中から優秀な人材が集まります。本連載では、フロンティア・マネジメント株式会社の代表取締役を務める松岡真宏氏と、同社のマネージング・ディレクターである山手剛人氏のの共著『ESG格差 沈む日本とグローバル荘園の繁栄』から一部を抜粋し、国境を越えて優秀な人材の獲得に成功している企業が「働きやすさ」以外に提供しているものについて解説します。

グローバル大企業の社員が強い「愛社精神」を抱くワケ

「女性の成長環境がある企業ランキング」で2位のグーグルも、オープンワーク社の2020年9月発表の「退職者からの評価が高い企業ランキング」で2位を獲得し、男女を問わず働きやすく、成長実感を提供する企業と認識されている。

 

グローバル大企業の社員は、元社員も含めて、愛社精神・社員であることの誇りが強いことが多い。

 

社員自ら「Amazonian(アマゾニアン)」と呼ぶアマゾンの社員は、社内の業務上・非業務上の取り組みに「アマゾニアン」としての共通の価値観を基準として判断する。

 

就職・転職の口コミサイトを通じて、社員や元従業員の生々しい声が見聞きできるようになった現在、企業と求職者の間に存在していた情報の非対称性が薄れつつある。

 

人口減少に伴い、若手労働力不足に直面する日本企業にとって、ESG推進への取り組みに出遅れることは、「働きやすそうで、より成長機会を与えてくれそうな」グローバル大企業に人材を奪われ、結果として自社の事業成長も阻害されるという負のスパイラルを加速しかねないのである。

21世紀の荘園を生み出す富の偏在

逆に言えば、ESG推進にいそしむ企業群は、質の高い労働力を世界中から集めることがより可能となる。

 

有能な人材は差別化された創造的な商品・サービスを生み出す。それが利益につながる。こうした好循環を生み出す企業と生み出せない企業はその先、どうなっていくだろうか。

 

有能な働き手たちは、前者に属することで物質的にも精神的にも安寧を得る。

 

世界の果てで何が起ころうと、豊かに繁栄しているように眩い輝きを放つグローバル大企業。その経営者や従業員の様子は、さながら現代に蘇った「21世紀の荘園」のようでもある。

 

ここでそもそも荘園とは何かをおさらいしておこう。

 

日本史に登場する荘園とは、国土の中でも貴族や社寺、地方豪族による私有が許されている土地のことを指す。

 

その私有地を基盤として、荘園に帰属する人民を支配する仕組みを荘園制と呼んでいる。

 

 

松岡 真宏

フロンティア・マネジメント㈱

代表取締役 共同社長執行役員

 

山手 剛人

フロンティア・マネジメント㈱

マネージング・ディレクター コーポレート戦略部門 企業価値戦略部長 兼 産業調査部

 

ESG格差 沈む日本とグローバル荘園の繁栄

ESG格差 沈む日本とグローバル荘園の繁栄

松岡 真宏・山手 剛人

日経BP

お飾りのSDGsでは勝てない。混沌とする世界のサステナビリティ動向を俯瞰して見えてきた、残念な日本企業の姿――。 脱炭素(E)の追求は、エネルギー危機で迷走!ESGの焦点は、日本企業が苦手なSとGへ。 〔地球・社会によ…

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