PBR横ばいの原因は「PERの低下」
ではなぜ、過去10年において、日本株のROEは上がったものの、PBRは横ばいだったのか。
その答えは「PERが低下したため」となりますが、もう1歩先に進んで、「どういったときにPERは下がるのか」について考えてみます。
「PBR=ROE×PER」を思い出すと、ROEが上がるときにPBRも上がるためには、シンプルには「PERが横ばいであることが必要」です(→厳密には、ROEの上昇率がPERの低下率を上回ればよい、となります)。
理論式に基づいて計算すると、利益の増加や株数の減少がROEの上昇をもたらす場合に「PERが横ばいである」ためには、
1.利益の増加が恒久的であると株価に織り込まれる(→1株利益の上昇率=株価の上昇率;純利益の増加率=時価総額の増加率)
2.株数の減少が恒久的であると株価に織り込まれる(→株数の減少率=株価の上昇率;時価総額が一定すなわち当該株式への需要が一定の下で株数が減少する)
のいずれかが必要です。
過去10年の日本株式市場で「ROEは上がったものの、PBRは横ばいだった要因は、PERの低下であった」わけですが、その背景には、投資家が「利益の増加や株数の減少を一時的とみなした」ことになります。
投資家が利益の増加や株数の減少を「一時的」とみなしたワケ
では、なぜ、投資家は、利益の増加や株数の減少を一時的とみなしたのか。
ある評論家は「人口が減少している国には投資家は期待を持たない」、別の評論家は「アベノミクスや日銀の金融緩和が利益を一時的に押し上げただけ」と、いつもの「上から目線」の「訳知り顔」で言うでしょう。しかし、それは彼ら「お得意の後講釈」であり、投資家にとっては現実がすべてです(→そして、まちがいなく、筆者もそうした評論家の1人です)。
現実には、日本株を信じた投資家は、米国株よりも大きい投資家リターンを得てきました。言い換えると、割安な株価で企業利益を獲得する機会を与えられました。反対に、米国株の投資家は、割高な株価で企業利益を得てきました。
そして、[図表3]に示すとおり、現在(1年先の予想1株利益/現在の株価)も状況は同じで、日本株のほうが、米国株に比べて投資家リターン(期待ベース)が高いままです。