(※写真はイメージです/PIXTA)

遺言書には種類がいくつかありますが、「自筆証書遺言」は専門家に依頼することなく、自分で作成できる遺言書です。しかし、作成には厳格なルールがあるため注意が必要と、相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士はいいます。文例とともに「自筆証書遺言」の正しい作成方法をみていきましょう。

自筆証書遺言作成を自分で行う「デメリット」

自筆証書遺言を自分で作成することには、デメリットも存在します。次のデメリットを理解したうえで、自分で自筆証書遺言を作成するのか専門家へ依頼するのかについて、慎重に検討するとよいでしょう。

 

要件を満たせず無効になるリスクがある

有効な自筆証書遺言を作成するためには、先ほど解説した要件をすべて満たさなければなりません。自分で作成をした場合には、うっかり押印を忘れたり日付を「吉日」と書いてしまったりして要件を満たせず、無効になる可能性があります。

 

また、自筆証書遺言はその加除訂正の方法も厳格です。加除訂正の方法を誤ってしまうと、意図とは異なる内容で遺言書が執行されてしまったり、遺言書が無効になってしまったりする可能性もあるでしょう。

 

財産目録も自分で作成する必要がある

先ほど解説したように、自筆証書遺言に添付をする財産目録は、自書でなくても構いません。これは、財産をすべて自書しては大変であるうえ書き損じのリスクも高くなることから、2019年1月13日より施行されている改正で新たに誕生したルールです。専門家へ遺言書の作成サポートを依頼した場合には、この財産目録は専門家側で作成してくれることが多いでしょう。

 

しかし、自分で自筆証書遺言を作成した場合には、財産目録もすべて自分で作成しなければなりません。財産目録は、遺言の書き方によっては、必ずつけなければならないものではありませんが、当然ながらこの財産目録にも正確性が求められ、記載があいまいであったり誤っていたりすれば、手続きができない可能性があります。

 

相続開始後に見つけてもらえないリスクがある

自筆証書遺言を自分で作成した場合には、遺言書を作成したことを遺言者以外が知らない場合があります。この場合には、相続が起きても遺言書を見つけてもらえないリスクがあるでしょう。

 

遺言書を見つけてもらえなければ、遺言書の内容が実現されることはありません。また、場合によっては遺言書の内容に納得がいかない相続人などが、遺言書を隠匿したり偽造したりする可能性もあります。

 

そのため、自分で自筆証書遺言を作成する際には、信頼できる相手に遺言者を預けておくなど、保管方法にも工夫が必要です。先ほど解説した法務局での保管制度を利用したうえで、信頼できる相続人などに保管制度を利用していることを伝えておくことなども検討するとよいでしょう。

 

遺言執行が適切になされないリスクがある

弁護士などの専門家に遺言書の作成サポートを依頼した場合には、遺言を書いた方が亡くなったあとに、その遺言の内容を実現すること(「執行」といいます)まで依頼することが可能です。執行を専門家へ依頼した場合には報酬が必要となるものの、遺言が確実に執行される可能性が高くなるでしょう。

 

一方、自分で自筆証書遺言を作成し、遺言執行者も身内の人などを指定した場合には、遺言執行への知識不足などから、遺言執行が適切になされない可能性があります。また、自身に都合の悪い内容の執行をせずに放置するなど、トラブルの原因となる可能性も否定できません。

 

トラブルの原因となるリスクがある

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

自筆証書遺言を誰にも相談せず1人で作成すると、トラブルの原因となる可能性があります。この点が、自分1人で自筆証書遺言を作成することの最大のデメリットといえるでしょう。自筆証書遺言の不備や検討漏れなどから生じるリスクは非常に多岐にわたりますが、代表的なトラブルは遺留分侵害額請求です。

 

遺留分とは、配偶者や子など一部の相続人に保証された、最低限の相続での取り分です。 遺留分を侵害した遺言書であっても作成することは可能であり、遺留分を侵害したことを理由に無効となるわけではありません。

 

しかし、相続が起きたあとで、遺留分を侵害された相続人から遺産を多く受け取った人に対して、遺留分侵害額請求がなされる可能性があります。遺留分侵害額請求とは、侵害された自分の遺留分相当額を金銭で支払うよう請求することです。

 

弁護士などの専門家のサポートを受けて遺言書を作成した場合には、専門家側から遺留分侵害のリスクについてアドバイスがもらえる可能性が高いでしょう。一方、自分で遺言書を作成した場合には遺留分侵害などのリスクに気が付かず、せっかく残した遺言書が将来のトラブルの種となってしまう可能性があります。

まとめ

遺言書を問題なく自分で作成することは、簡単なようにみえてリスクが伴います。 そのため、遺言書の作成は、弁護士などの専門家のサポートを受けて行うのがおすすめです。

 

参考文献

※1 自筆証書遺言の方式(全文自書)の緩和方策として考えられる例

 

 

堅田 勇気

Authense法律事務所

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

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