出産育児一時金の財源の一部を後期高齢者医療制度に負担させることの意味
今回の法改正では、引き上げられた保険料の一部が「出産育児一時金」の財源に充てられることになっています。
◆出産育児一時金とは
出産育児一時金は、女性が出産した際に、健康保険から、子1人について原則として50万円を受け取れる制度です。
2023年3月以前は42万円でしたが、近年の出産費用の上昇等を踏まえ(【図表3】参照)、4月から増額され50万円になりました。
◆揺らぐ後期高齢者医療制度
出産育児一時金の財源は、従来は、74歳未満の世代を対象とする公的医療保険制度の枠内で賄われてきました。しかし、今回の法改正により、後期高齢者にも、所得に応じてではありますが、一部を負担してもらうことになったものです。
これは、公的医療保険制度と後期高齢者医療制度の垣根を一部取り払うことを意味します。
今後、「人生100年時代」を迎え、高齢者の人口は増加する一方で少子化が進むとされています。そうなれば、必然的に、現役世代の負担が増大していくことになります。
そんななかで、今回の改正法は、後期高齢者医療制度の枠内における「所得の大小による格差」だけでなく、後期高齢者医療制度と健康保険制度の垣根を一部取り払い、「世代間の格差」に目配りしたものといえます。
真に公平な社会保障制度を設計するためには、今後の人口の動向もふまえ、「所得の大小による格差」だけでなく、「世代間の格差」も考慮し、公平な制度を設計しなければなりません。
また、寿命が延びるにつれ、老後資金を確保するためには「働けるうちは働く」という考え方が主流になっていくことが予想されます。
そんななかで、公的年金の制度だけでなく、現行の医療制度において「74歳以下は公的医療保険制度」「75歳以上は後期高齢者医療制度」と画然と分けられていることの合理性・正当性が問題となっていくのは間違いありません。
今後、75歳以上の世代がさらなる負担増を求められるようになっていく可能性もあるということなのです。
後期高齢者医療制度は、2008年4月の施行から15年にして、早くも大きな岐路を迎えているといえます。
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