60歳定年企業で「継続雇用者」は86.8%
厚生労働省『高年齢者雇用状況等報告』によると、2017年には15.3%だった「65歳定年企業」も、2022年には21.2%に増加。66歳以上まで働ける企業の割合は39.9%、70歳以上まで働ける企業の割合は38.2%となってる。
2013年の「高年齢者雇用安定法」により、希望者は65歳まで働けるようになり、2025年4月から企業は65歳までの雇用確保が義務となったが、今後もさらなる法改正で、70歳までの就業確保が努力義務になるなど、生涯にわたって働ける環境が整いつつある。
とはいえ、現状における定年年齢の多くは、まだ60歳が主流ではある。60歳で定年を迎えた人は、どのような選択をしているだろうか?
同調査によると、報告のあった企業の常用労働者数約3,380万人のうち、60歳以上の常用労働者数は約447万人で、全体の13.2%。年齢別では、60~64歳が約239万人、65~69歳が約126万人、70歳以上が約82万人。また、従業員31人以上企業の60歳以上の常用労働者数は約421万人で、2009年調査と比較すると約205万人も増加している。
ひるがえって、60歳定年企業で定年に到達した人は369,43人/年。このうち「継続雇用者」は86.8%、継続雇用を希望せずに「定年退職した人」は13.0%、継続雇用を希望したものの「継続雇用されなかった人」は0.2%となっている。
継続雇用、若手・年長者双方の「やりにくさ」も課題に
継続雇用は、慣れ親しんだ環境で働けるといったメリットがある一方、雇用形態の変更による給与額の変化や、かつての部下や後輩に使われる立場になることによる心理面の影響など、デメリットもある。
若手従業員にも、ベテラン社員が部下の立場となって働き続けることに戸惑いはあるようだ。この問題は、役職定年制がある会社にもしばしばみられる。
「元上司に仕事を頼むなんて、やりにくい…」
そんな若手の声がある一方で、上司の側も、
「若手に指示をされるのが、つらい…」
といった思いから、やりにくさを感じるケースがある。
そんなストレスに耐えられず、せっかく継続雇用の道があっても、あえてそこから離れる決意する人もいる。
60歳引退 vs. 65歳まで就労…「年金格差」を考える
では、60歳定年で現役引退を選ぶ人はどの程度かというと、約13.0%。7~8人に1人は60歳で会社員人生にピリオドを打つことになる。60歳で会社を辞めた人と、60歳以降もはたくことを決意した、残り8割以上の会社員との間には、明確な差が生じる。それは「65歳以降にもらえる年金」だ。
サラリーマン(正社員)の平均給与から、その差額を見てみよう。
60歳定年前の平均給与(所定内給与)は月42.8万円、年収は694万円。20歳から60歳までサラリーマンの平均給与を手にした場合、平均標準報酬額は32等級中26等級で46万円。60歳定年で現役引退した場合、65歳から手にする公的年金は、厚生年金部分が10万円※。国民年金が満額支給なら、月16.4万円を手にする計算だ。
では65歳まで働いた場合はどうか。65歳前の平均給与は月35.1万円で年収は529万円。年収は60歳定年から25%以上の減額となる。平均標準報酬額は60歳定年時と変わらず、26等級で46万円。65歳でもらえる年金額は厚生年金部分が11.3万円。国民年金と合わせて17.4万円となる。
つまり、平均的なサラリーマンが、60歳定年後も厚生年金の保険料を5年分多く払った効果は、月1.3万円。
※ 厚生年金の受給額は加入期間が2003年3月までは①「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」、加入期間2003年4月以降は②「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」で計算できるが、便宜上②のみで計算。
60歳定年で現役引退するか、65歳まで働いて現役引退するか。そこで生じるのは、月1.3万円の年金差。平均寿命から逆算すると、老後は20年あまり。当然だが、平均より長い老後生活を送る人もいるはずだ。ここ最近の情勢を考えれば、これから先の老後生活において、インフレや不測の事態の発生は十分考えられることだ。現時点では、月1万円強の差額を「たいした金額ではない」と思うかもしれないが、長い年月を経れば、ボディブローのように効いてくる可能性は高い。
自身の老後のマネープランについても、慎重に考え、行動することが望まれる。
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