景気は回復傾向なのに…「アラフィフたち」は蚊帳の外
ゴールデンウィークも過ぎ去り、どことなくぎこちなかった新入社員たちもすっかり通勤風景に溶け込んだ今日この頃。コロナ禍も落ち着き、企業はコロナで喪失した利益を取り戻すべく、どこもアグレッシブにビジネスを展開している。
そして、企業の一員となった若手社員たちは、戦力として大いに期待され、給与その他の面でも手厚い待遇を受けている。
ひるがえって、40代~50代前半のいわゆる「就職氷河期世代」はどうか。超不景気となった1990~2000年代に大学卒業時期が重なったこの世代は、高い学歴を保有しながらも、収入に結び付けられない人も多く、いまなお非正規から脱出できない人もいる。
2000年代後半、雲間から光が差したかのように、一瞬だけ雇用環境が改善した期間があったが、その後はふたたびリーマンショックによって状況が悪化。2010年代中盤にようやく雇用環境が改善したとき、最初の氷河期世代はすでに40代後半になっていた。
かつて多くの企業が採用を見送りった、現在「アラフィフ」世代のうち、いまなお非正規の立場にある人は、苦しい状況に立たされている。
年金受給額、月11万円を下回る人たちも多数存在か
大卒男性・非正規社員の給与(所定内給与額)の中央値は24.5万円(厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』より)。50代前半なら22万3000円、手取り17万円程度だ。60歳まで現在と同じ給与水準と仮定したうえで、厚生年金に加入していた場合、65歳から手にする年金額は月11万6000円程度※になる。
【年金の支給額】
〈国民年金〉
年金額×(保険料の納付月数÷480ヵ月)
〈厚生年金〉
★加入期間 2003年3月まで
①「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」
★加入期間 2003年4月以降
②「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」
※便宜上、②だけで計算した場合。厚生年金は月5.2万円程度、国民年金は満額支給で現在の受給額でとすると、月11万6000円程度となる。
2020年10月から非正規(短時間労働者)にも適用されることになった厚生年金保険だが、それ以前は加入できないケースが多かった。そのため、上述の年金受給額月11万円を下回る人たちも、かなりの数に上ると考えられる。
「厚生年金」「国民年金」の平均受給額
一方、現状の年金受給者の状況だが、厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、2021年の厚生年金受給者の平均年金受給額は、老齢厚生年金が月額14万5,665円、国民年金受給者の平均年金受給額は老齢年金(加入25年以上)で月額5万6,479円。
年齢別に年金受給額をみると、繰り上げ受給の影響によると思われるが、厚生年金・国民年金とも、65歳以前を境に平均受取額は増加。厚生年金は、70代は平均14万円台、80代前半は平均15万円台、80代後半以降は平均16万円台と、平均受取額は上昇傾向。おそらくこちらは、法改正の影響だろう。
【年齢別「年金受給額」】
◆厚生年金
60歳:87,233円
65歳:145,372円
70歳:141,026円
75歳:145,127円
80歳:154,133円
85歳:161,095円
90歳以上:160,460円
◆国民年金
60歳:38,945円
65歳:58,078円
70歳:57,405円
75歳:56,643円
80歳:55,483円
85歳:56,404円
90歳以上:51,382円
出所:『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』(厚生労働省)
厚生年金の受取額の分布において、年金月20万円以上は全体の15%と、6~7人に1人の割合だ。年金15万円以下は全体の54%程度、月10万円に満たないのは全体の23%でほぼ4人に1人、月5万円未満は2.5%と、50人に1人となっている。
「自己責任」と突き放しても、問題は解決しない
正社員で就労してきた高齢者ですら決して多いとは言えない年金受給額。就職氷河期世代の場合は、一層厳しい状況が予想される。
なにより、就職氷河期世代の非正規の人が、現状の生活を継続したとしたら…。高齢者となったときに、悲惨な状況に陥る可能性は高い。
将来、実現する可能性が高い「貧困リスク」。対策を練り、回避することが何より重要だ。就職氷河期世代については、自己責任論も飛び交っているが、彼らを突き放したところで問題解決にはならない。官民一体となって、現実的なサポートを展開することが望まれる。
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