本来動物にとって、冬は体力を温存する季節だが・・・
免疫力は、一年の中でも、季節の移り変わりにしたがい変動するのをご存じでしょうか。
「冬になると風邪をよくひくし、冷え性にもなりやすいから、夏よりも冬の方が、免疫力が落ちやすい」と思っている人が多いかも知れませんが、実は、一年のうちでもっとも免疫力が低下しやすいのは、冬ではなく夏なのです。
そもそも北半球で四季のある地域に棲息している動物は、冬の寒さに備えるため、秋に栄養を体内にため込もうとする身体の摂理が備わっています。そのため、免疫力も実は秋にもっとも高く、その秋のたくわえにより冬も、比較的高い状態を保っているのです。
それでも冬に風邪をひいたり、寒さで体調を崩したりするのは、人間が自然の摂理に逆らい、暖かい時期と同じペースで仕事をしたり、生活をしたりしているからです。本来動物にとって、冬は活動レベルを抑え体力を温存する季節ですが、現代社会においては、そうもいっていられません。
免疫力が十分あるとしても、過酷な環境の中で外へ出ていき忙しく動き回っていれば、その分、消耗も激しくなります。そこに風邪ウイルスなどの病原菌がつけ入ると、風邪をひいてしまうというわけです。
「免疫力の消耗」が進む、夏特有の環境条件とは?
春から夏にかけては、本来、それまで体内にため込んでいたエネルギーを外へ発散させる季節です。植物も、春になれば芽吹き成長するにつれ、種にたくわえられた栄養がどんどん使われていきます。
動物においても、外から見れば活動的でいきいきしているように見えますが、エネルギーも、免疫力も、身体の中にたくわえられていたものは、むしろ消費されていく一方なので、少なくなっているのです。
そして、夏の暑い盛りになると、体内の免疫力のプールが残りわずかに。夏に雨が少なく作物が育たない状態を「夏枯れ」などといいますが、体内の免疫力の状態をあらわすのにもぴったりの言葉だと思います。さらに、現代の日本では、夏特有の環境条件が免疫力の消耗を進めてしまいます。
例えば、建物の内外の気温差。外は太陽がじりじりと照り付け暑い一方、室内は冷房がよく利いていて、キンキンに冷えているといった環境のもとでは、体温を調節する自律神経のバランスが乱れがちになります。これが免疫力の低下につながってしまうのです。また、免疫力は夜寝ている間に回復しますが、夏は熱帯夜で寝苦しい日が多く、睡眠不足に陥りがちなので、その仕組みもスムーズに働きにくくなります。
そのため免疫力が回復しきらず、下がる一方に。加えて、暑さによる食欲不振も、栄養不足を招き、免疫力の低下に拍車をかけてしまいます。夏こそ、免疫力の低下に特に気をつけ、積極的に高めるよう心がけるべきなのです。
しかしなかなか、実行に移すのは難しいものです。夏はお盆休みを利用して旅行やレジャー、スポーツを楽しむ人も多いことでしょう。それ自体は好ましいことなのですが、張り切りすぎると後になって、がくっと疲労感に襲われることも少なくありません。これがいわゆる「夏バテ」です。
免疫力が落ちている状態で無理に身体を動かした結果ともいえるのです。まずは、夏に免疫力が低下しがちなことを覚えておきましょう。できるだけ食欲を落とさず、よく眠れる環境を整え、無理をしないことが大切です。