「ROE」から、株主の資本(自己資本)をいかに効率よく運用できたかを分析する
◆ROEとは
そこで登場するのがROEです。ROE(自己資本利益率)は、別名、株主資本利益率ともいわれ、株主の資本(自己資本)をいかに効率よく運用できたかを分析します。
ROE=当期純利益/自己資本×100
「当期純利益」が分子なので、高ければ高いほど効率よく利益を上げていることになります。
なお、分子には、広い意味では損益計算書における「5つの利益」―「売上総利益」、「営業利益」、「経常利益」、「税引前当期純利益」、「当期純利益」のいずれも入り得ます。しかし、ROEは、株主のお金を使って、どれだけ利益をたたき出すことができているのかを知るための指標なので、最終利益、つまり「当期純利益」を入れるのが一般的です。
ここで[図表3]をご覧ください。A社、B社、C社のうちどの会社がもっとも収益力のある会社といえるでしょうか?
一見、300億円も当期純利益を計上しているC社と答えたくなりますが、ROEを使って分析すると
A社=20億円/100億円×100=20%
B社=120億円/1,000億円×100=12%
C社=300億円/3,000億円×100=10%
ROEで見ると、300億円も利益を計上しているC社より20億円のA社が収益力のある会社なのです。
3,000億円の自己資本から300億円を生み出すより、100億円の自己資本から20億円を生み出すほうが、効率よく利益をたたき出しているということになります。
このようにROEを使うことで、会社の規模に関係なく収益力を比較することができます。
ROEは、すべての指標のなかで、もっとも大事だといわれています。それは企業が稼ぎ出す力である経営力と、株主への配分の両方が盛り込まれた指標だからです。
前述のように、300億円の利益を稼ぎ出しても、ROEが低ければ、株主へのリターンが少ないことになります。
では、ROEを上げるには、どうすればよいか?
ROEの計算式は、当期純利益/自己資本×100で算出します。つまり、分子である当期純利益を増やすか、分母である自己資本を減らすかしかありません。
◆当期純利益を増やす方法
当期純利益は、収益から費用を差し引くことで求められます。収益-費用=利益なので、収益を増やせば利益が増えるし、費用を減らしても利益が増えます([図表4]参照)。
ROEを上げるために、利益目標を掲げ、収益を上げ、ムダな費用を削減して達成するのは素晴らしいことです。
しかし売上を上げるために過剰なノルマを課したり、費用を圧縮するために無理なサービス残業を強制して、賃金を抑えたりしては、元も子もありません。
また、研究開発費を削減することで短期的にROEを上げても、将来の収益につながる研究開発費を削減してしまうと長期的には新しい開発ができず会社の成長も阻害されます。
ROEを上げることは重要ですが、長期的な視野で見ると悪影響が出る可能性もあるので、注意が必要です。
◆自己資本を減らす方法
自社株を買うことで、株式発行総数を減らす方法があります。
また資金調達において他人資本を増やしても、自己資本は減ります。ただ、その場合には、危険なことがあります。
たとえば、自己資本10億円で当期純利益が5億円の企業の場合、ROEは驚異の50%です。しかし、もし負債が490億円あったらどうでしょうか。調達状況の98%を他人資本で賄っている超危険な会社ということになりますよね([図表5]参照)。
このように調達状況を他人資本で賄えばROEは上がるため、分析する際にはその点にも注意する必要があります。
《最新のDX動向・人気記事・セミナー情報をお届け!》
≫≫≫DXナビ メルマガ登録はこちら