なぜ「損益計算書」「貸借対照表」だけでは不十分なのか?
A社とB社、自他共に認めるライバル会社で、常にしのぎを削っていました。売上高も経常利益も当期純利益も、ほぼ同じです。
あなたは、どちらを高く評価しますか?
売上高も経常利益も当期純利益も「ほぼ同じ」なら「同じ評価になるのが当たり前じゃないか!」と思いますよね。
しかし、ほどなくしてB社は倒産してしまいました。A社をはじめ同業他社は営業を続けているので、突然の大不況が襲ってきたわけではなさそうです。
なぜ売上高、経常利益、当期純利益という主要な項目がA社と同じなのに、B社は倒産してしまったのでしょうか?
実はB社は以前、営業利益が赤字になったため、業績を改善しようと新規のお客さまを増やす努力をしました。そのため「代金は後払いでいいですよ!」と、かなり先延ばしにし、ほとんどの売り上げを手形取引にしたのです。
結果、売上代金の回収前に、仕入代金の支払日が来てしまい、手元にお金がなく支払いができず、資金がショートし倒産したのです。
実際、1990年代、筆者が勤めていた建設会社では手形取引が主流でした。なんと支払いは120日後。たとえば、4月の売上が500万円だとして、4月末に得意先に500万円の請求を出し、5月に届いた手形の支払期日欄には「8月31日に支払います」と記入されているんです。
4月の売上がお金に換わるのが120~150日後です。最近はこれほど長い手形サイト(振出日から支払期日までの日数)は珍しいですし、中小企業庁も60日以内を要請しています。
このように利益が出ているのに、会社が倒産することを「黒字倒産」といいます。
利益は同じ額を出していた両社ですが、A社は資金繰りが上手くいったのに対し、B社は失敗していたのです。
赤字なのに資金繰りは何とかなり、倒産していない会社がある一方、黒字なのに倒産する会社もあります。お金の流れの実態は、損益計算書や貸借対照表だけでは判断できないのです。
また、同規模のC社とD社。貸借対照表を確認すると、両社とも借入金が前年より2億円も増えています。借金が増えるとネガティブな印象を持ってしまうのが一般的です。
しばらくして、C社は経営破綻して倒産しましたが、D社は著しい成長を遂げました。
同時期に多額の借金をした両社に何が起こったのでしょうか?
C社は本業での資金繰りが上手くいかず、その穴埋めとして借金をしました。その後も経営状況が改善できず、倒産したのです。
一方、D社は借金をして調達した資金を新たな設備投資に使い飛躍的に成長しました。
資金調達や投資の状況を貸借対照表で読み解くのは難しく、黒字倒産する場合は損益計算書では見抜けません。
そこで登場するのがキャッシュ・フロー計算書(cash flow statement=CF)です。
■Point!
損益計算書や貸借対照表では、見抜けないこともある。それを分析するために生まれたのが、キャッシュ・フロー計算書。
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