「女性一人につき平均1.3人出産」という報道の“ワナ”
「少子化」関連のネタは、定期的にニュースになる。そのたびに「出生数は過去最低」「国難だ」のようにインパクトのあるタイトルで話題を誘っている。
さすがに、人口動態調査に基づいた出生数や合計特殊出生率が改ざんされることはない。しかし、数字自体は正しくても、その数字がどういう計算式で成り立っているかについて、そもそも無知な記者も存在するので注意が必要だ。
たとえば、合計特殊出生率という数字。一人の女性が生涯に産む子どもの数として紹介されている。
2021年の日本のそれは1.30である。よって、女性一人につき平均1.3人しか出産していないと報じているところもあるが、それは大いに誤解を招く。
誤解とは、「1.3人しか産んでいないということは、現在は二人兄弟姉妹家庭が少なくなって、一人っ子だらけなのか」というものである。
メディアはあえてその誤解を招く形の紹介をすることで、「子育てするにもお金がかかる。夫の育休促進や保育園の問題もある。一人目は産んでも二人目は産めない。それに対応しない政府はけしからん」といいたいのだろう。
合計特殊出生率とは、15ー49歳までの全女性の各歳ごとの出生率を足し合わせて算出したものである。が、全女性という以上、この中には、15-49歳の未婚女性も分母に含まれる。
よって、未婚率が高まればそれだけ自動的に下がることになる。
2020年の国勢調査において女性の生涯未婚率(50歳時未婚率)は過去最高の17.8%となった(配偶関係不詳補完値による)。
しかし、これは対象年齢が45-54歳に限っての話である。合計特殊出生率と同様に15-49歳で見れば、未婚率は47%にもなる。つまり、分母のほぼ半分が未婚者で占められるほど未婚率が増加しているのであり、出生率の値が下がるのは当然なのだ。
ちなみに、皆婚時代と呼ばれた1980年の同年齢帯での未婚率は30%だった。
出生率の指標は合計特殊出生率だけではない。