まもなく始まる、日本の「多死社会化」
「少子化」や「出生率」の話題と同様、メディアが困った時に使うのが「人口減少」というキーワードである。「人口減少は静かなる有事」「このままでは日本人がいなくなってしまう」などと危機感を煽るために使われる。
確かに、人口は減少する。というより、そもそもすでに日本の人口は2008年をピークとして減少基調に入っている(国勢調査による)。
「そりゃあ、これだけ少子化が続いていればそうなるよね」と納得するかもしれない。しかし、勘違いをしてはいけないのは、人口減少は少子化によってのみ引き起こされるのではない。
人口減少とは、死亡数が出生数を上回る自然減によって生じる。
日本は世界1位の高齢化率で、長寿の国だが、なぜそうなったかというと、1951年から2011年まで60年間にもわたって人口千対死亡率がわずか10.0未満の状態が続いたことによるものである。
「世界一死なない国」だからこそ、戦後わずかの間に、諸外国を一気に抜いて世界一の超高齢国家になったのだ。
しかし、人間は不老不死ではない。
現在の高齢者たちがお亡くなりになる時が確実にやってくる。それが「日本の多死社会化」である。そして、それはもう間もなく始まる。
「戦時中と同等の人数が死ぬ」時代の到来
社人研の推計によれば、2024年から年間150万人以上死ぬ時代が到来する。
これは、日本の統計史上最大の年間死亡者数を記録した1918年の149万人(スペイン風邪のパンデミックがあった年)を超え、統計が残らない太平洋戦争期間中の年間平均死亡者数に匹敵するといわれる。
戦争もしていないのに、戦争中と同等の人数が死ぬ国になる。しかも、それが約50年間継続する。
単純計算して、2022年から2100年まで合計1億1576万人が死亡し、生まれてくるのはわずか4728万人程度。差し引き約6850万人の人口が消滅する。
結論からいえば、日本の人口は「将来推計人口(平成29年推計)報告書(出生中位・死亡中位推計)」によれば、2100年には5972万人になる。
現在の半分だ。
これはちょうど1925年(大正14年)の人口5974万人(総務省統計局「大正十四年国勢調査結果の概要」)とほぼ同等である。
人口減少は少子化によって加速するのではなく、この高齢者の多死化によって起きるのだ。しかし、人口が半減してしまうことにパニックになる必要などない。
約6000万人の人口といえば、今のフランスやイギリスが約6700万人程度、イタリアも約5900万人であるし、韓国やスペインはもっと少ない。
むしろ今までの1億2000万人の人口が日本には多すぎだったのだ。