「お金持ちほど太っている」は昔の話
お金があれば、たくさん食べ物などを買えるので太りそうな気がしますが、じつは、「世帯年収が低くなると肥満リスクが高まる」という調査結果があります。
滋賀医科大学アジア疫学研究所(現在の滋賀医科大学NCD疫学研究センター)が、厚生労働省発表の「国民生活基礎調査」と「国民健康・栄養調査」(2010年)をもとに分析した2018年3月発表のデータによれば、世帯年収200万円未満の群は、世帯年収200万円〜600万円の群、世帯年収600万円以上の群よりも、肥満リスクが高くなるそうです([図表3])。
その背景には、炭水化物の摂取量があるようです。パンやおにぎりなど、安くて簡単に買って食べられる食事には炭水化物が多く含まれる傾向にありますが、収入が少ないと、どうしてもこうした炭水化物中心の食事に偏りがち。
昭和の時代までは、「貧乏な人ほど痩せていて、お金持ちほど太っている」のが世間の常識と思われていました。
ところが、今はその逆で「お金持ちほどスリムで、お金がない人ほど太っている」という傾向にあるようです。
たしかに、年収が低い方ほど、食生活の選択肢も狭まりがちで、自炊をせず、コンビニ弁当やハンバーガー、牛丼などを食べて、間食にポテトチップや甘いお菓子を食べているという人も少なくないのではないでしょうか?
その結果、太ってしまうというわけです。
この傾向は、日本だけではなく、アメリカでも顕著に現れています。
米国のハーバード公衆衛生大学院の研究チームが、成人600万人以上が自己申告した体格指数(BMI)を分析し、高度肥満のリスクは、とくに女性、非中南米系の黒人の成人、年収5万ドル(約650万円)未満の低所得者層に多いという結果を2019年12月に発表しました。
なぜ貧困層などで肥満率が上がっているかといえば、糖分の多い飲み物やカロリーばかりが高い食べ物に食生活が偏りがちだから。
ファストフードにみられるような高カロリー食品のほうが、お金持ちが摂っているオーガニック食品などよりも安価で手に入るからです。
また、時間やお金に余裕のある方が行なうエクササイズによる体重管理も、収入が低いと取り組みにくいことも要因に挙げられています。
「貯金ができない」と嘆く前に、まずは自分自身が偏った食生活を送っていないかどうか振り返ってみましょう。
■節約ポイント
1日の食事内容を書き出し、炭水化物中心の「高カロリー生活」になっていないかチェックする。
荻原 博子
経済ジャーナリスト