全世界レベルで注目される「FinTech」とは?

今回は、全世界レベルで注目される「FinTech」とは概要を見ていきます。※本連載は、西村あさひ法律事務所の有吉尚哉弁護士、本柳祐介弁護士、水島淳弁護士、谷澤進弁護士の編著書籍、『FinTechビジネスと法 25講』(商事法務)の中から一部を抜粋し、近年、大きな注目を集めている「FinTech」の概要や関連法制について紹介していきます(本稿は、上記書籍の1講の抜粋です)。

新規技術を利用した金融サービス関連事業

筆者はさまざまなFinTech系企業をサポートさせていただいているが、金融法規制についてはその専門家である本書の他の執筆者と協力して支援をさせていただいており、筆者自身は事業遂行の戦略設計を専門としている。

 

そのため、本講では導入として詳細な法的議論はひとまず措き、一事業領域としてFinTechを概観しつつ、FinTechを考える際に避けては通れない法規制に対する取組方について述べさせていただきたい。

 

なお、現在この分野ではごく短期間のスパンで新しいビジネス・サービスが生み出され、また、既存プレイヤーの事業のピボットもしばしばみられるため、本書執筆時点の個々の企業名やサービスの内容を網羅的に挙げる意義は必ずしも大きくなく、基本的にはこういった情報については新聞やオンラインメディアなどのリアルタイムメディアに譲りたい。

 

FinTechという言葉は「Finance」と「Technology」を組み合わせた造語であり、厳密な定義はないが、広く解すると、新規技術(ビジネスモデルを含む)を利用した金融サービス関連事業といったところかと思われる。この言葉自体は、何らかの許認可・規制に紐付いているわけではなく、あくまでも他事業分野で技術革新を起こしてきた技術が金融サービス分野に流入しているという昨今の大きな現象を示す語といった方が適切ではないだろうか。

 

2011年、筆者が米国スタンフォード大学のビジネススクールの学生であった頃には「FinTech」という言葉はすでに当たり前のように使用されていた。実際に当時同級生で自らの立ち上げた企業をFinTechとして紹介し、資金調達にいそしんでいた者もいた。

 

また、今日ではFinTech企業としてカテゴライズされるであろうペイパルは1998年に設立された会社であり、すでに2002年にはイーベイに買収されている(その後2015年にイーベイからスピンオフし2016年現在はナスダック上場会社である)。

 

また、個人向け金融資産管理サービスを提供するミントは2006年に設立され2009年にはインテュイットに買収されている。ロボアドバイザリーのサービスを提供しているベターメントは2008年に設立された会社であり、本書執筆時点直近の資金調達の際の企業価値評価は7億ドルといわれている。これらの企業はすでに「スタートアップ」の域を超えた大企業・事業体となっている。

急激な増加を見せるFinTech企業への投資額

このようにFinTechは総体としてはすでに新規事業領域ではないが、過去数年において、FinTechは加速の一途を辿っている。その背景には、リーマンショックを経験したことで個人投資家の嗜好が従来型でない金融商品やサービスにシフトしてきていること、テクノロジーの進化に伴い金融とITやAIを融合したさまざまなサービスが実現可能となってきていること、そして、スマートフォンの普及が一般消費者のインターネットへの間口を大きく広げ、結果的にマスへの訴求が容易となったことなどが挙げられる。

 

さらに、米国、イギリスをはじめとする各国の規制緩和の流れや初期のFinTech企業の成長・成功もあり、近年頓に全世界レベルでFinTech領域への注目度が上昇している。米国、ヨーロッパ、そして中国では多数のFinTech企業が出現し多数の大規模企業投資が行われている。たとえば投資額でみると、2014年のFinTech企業への投資額は全世界で約120億ドルといわれており、2012年の約20億ドル、2013年の約40億ドルから年々急激に増加してきている(アクセンチュア/CB Insights)。

 

また、このようにFinTechの領域は主にスタートアップ企業によって牽引されていると言えるが、最近ではグーグルやアップル、アマゾンなどの金融セクター以外の大企業がその技術、プラットフォーム、商流、顧客ベースなどを利用してFinTechの領域に乗り出してきている。

 

こうした動きに伴ってFinTech領域は、①従来なかった形での金融商品やサービスの提供、②(いわゆる「Unbanked」、「Underbanked」といわれるセグメントを含めた)これまで金融サービスにアクセスのなかった顧客層への金融サービスの提供など、金融サービスの地平を劇的に拡張しつつある。

西村あさひ法律事務所・パートナー 弁護士 

2004年東京大学法学部卒業、2005年司法修習終了(58期)、2013年スタンフォード大学ビジネススクール(MBA)卒業、2012年〜2014年米国WHILL,Inc.ビジネスディレクター、2007年〜2010年および2015年成蹊大学法科大学院非常勤講師。
【主な著書等】『租税法概説(第2版)』(共著、有斐閣、2015)、『企業取引と税務否認の実務』(共著、大蔵財務協会、2015)、『ビジネスパーソンのための企業法務の教科書』(共著、文藝春秋、2012)、「シティグループと日興コーディアルグループによる三角株式交換等の概要〔下〕」旬刊商事法務1833号(共著、2008)

(第1講担当)

著者紹介

西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士

2001年東京大学法学部卒業、2002年司法修習終了(55期)、2010年〜2011年金融庁総務企画局企業開示課専門官、2013年~京都大学法科大学院非常勤講師、2018年~武蔵野大学大学院法学研究科特任教授。

【主な著書等】
『金融とITの政策学』(共著、金融財政事情研究会、2018)、『ファイナンス法大全(上)(下)〔全訂版〕』(共編著、商事法務、2017)、『ここが変わった!民法改正の要点がわかる本』(翔泳社、2017)、『FinTechビジネスと法25講』(共編著、商事法務、2016)、『資産・債権の流動化・証券化(第3版)』(共編著、金融財政事情研究会、2016)、『平成26年会社法改正と実務対応(改訂版)』(共著、商事法務、2015)

著者紹介

西村あさひ法律事務所・パートナー 弁護士
ニューヨーク州弁護士 

2001年早稲田大学法学部卒業、2003年司法修習終了(56期)、2010年コロンビア大学ロースクール(LL.M.)卒業。

【主な著書等】『ファンド契約の実務Q&A〔第2版〕』(商事法務、2018)、『ファンドビジネスの法務〔第3版〕』(共著、金融財政事情研究会、2017)、『FinTechビジネスと法 25講』(共編著、商事法務、2016)、『投資信託の法制と実務対応』(共著、商事法務、2015)、「株式関連事務におけるブロックチェーンの活用」NBL1168号(2020)、「株式投資型クラウドファンディング業者に関する法的論点と実務」旬刊商事法務2112号(2016)、「上場企業の第三者割当をめぐる法整備の概要」ジュリスト1470号(共著、2014年)、「外国ETF・外国ETFJDRの上場に関する法的論点と実務」旬刊商事法務2034号(2014)、「並行第三者割当の法的論点と実務」旬刊商事法務2024号(共著、2014)、「〔座談会〕ブロックチェーンの法的検討(上)(下)」NBL 1094・1096号(2017)

著者紹介

西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士
ニューヨーク州弁護士

2004年東京大学法学部卒業、2006年司法修習終了(59期)、2012年ヴァンダービルト大学ロースクール(LL.M.)卒業、2012年〜2013年金融機関(在ニューヨーク)に出向、2013年〜2014年外資系証券会社(在東京)に出向。

【主な著書等】
『新株予約権ハンドブック(第3版)』(共著、商事法務、2015)

著者紹介

連載法律家による「FinTech」入門

本連載は、2016年7月15日刊行の書籍『FinTechビジネスと法 25講』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

FinTechビジネスと法 25講

FinTechビジネスと法 25講

有吉 尚哉,本柳 祐介,水島 淳,谷澤 進 編著

商事法務

西村あさひ法律事務所所属の弁護士が、「FinTechビジネス」のさまざまな分野ごとに概要を紹介しつつ、それらのビジネス遂行上に必要な法令の基礎知識・適用関係を、平成28年5月25日に成立した改正Fintech関連法も踏まえて解説…

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