老舗企業ほど実力主義!?
老舗企業と言えば、ぼんぼん育ちの創業家の長男が後を継ぎ、優秀でなくても番頭が経営を支える、といったイメージがありませんか。
しかし、老舗企業の後を継ぐというのは甘いものではありません。例えば、世界最古の金剛組では、分家が継承したり、外部から婿を取ったりしているケースが多いのです。
静岡文化芸術大学の曽根秀一教授の調査によると、江戸時代初期の第25代から第40代までの当主のうち、10人の当主が長男以外、もしくは他家から登用された人物です。
金剛家では直系長男であっても、当主に適任でないと評価されれば当主になれませんでした。また、いったん当主になっても、能力不足と見なされれば解任されて、家から追放されることもありました。
中庄は1783年(天明3年)に創業した紙の専門商社。
初代・庄八が定めた家憲の中には「当主の実の長男には後を継がせず、他家から優秀な養子を取って後継ぎにする」と書いてあります。
2代から6代までは養子継承が続きました。養子として中庄に入った人たちが中庄の基盤を築いたのです。
老舗企業は実力主義であり、当主の長男に生まれたからといって、のんびりしていられるような甘い体質ではありません。
もしそうであったならば、現代まで継続することはなかったでしょう。
実は失敗に寛容な老舗企業
老舗企業は代々同じ事業を営み、新しいことに手を出して失敗など許されないと思われがちです。しかし、老舗企業は前向きな失敗に寛容です。
お酢、みりん、納豆などで有名なミツカンは失敗を恐れないチャレンジング企業です。
現在の愛知県半田市で酒造業を営んでいた初代の中野又左衛門が1804年(文化元年)に分家独立し、お酢の醸造を開始したのがミツカンの始まり。
かつてミツカンがビール事業を手掛けていたことを知っていますか。
ビール製造には、お酢の製造技術が役に立つので、関連性がないわけではありません。
1889年に「丸三麦酒(まるさんびーる)」を発売し、1896年には「丸三麦酒株式会社」を設立しました。一時は国内シェア第5位でしたが、競争が厳しく儲からないと判断し、事業を売却しました。
1971年にはハンバーガーショップ事業を始めました。
マクドナルドが銀座に第1号店を出店したのも1971年のことです。
ミツカンは「ハンダス」という名称のハンバーガーショップを東京都内を中心に展開しましたが、マクドナルドなどとの競争が厳しく約10年後に事業撤退しました。飲料事業やカット野菜の製造・販売でも失敗した経験があります。
一方、1997年に参入した納豆事業では大成功を収めています。お酢の製造で培った菌の発酵技術は納豆製造にも役立つのです。現在、日本の納豆業界では第2位のメーカーであり、納豆はミツカンにとって重要な主力製品です。
ミツカンは老舗企業ですが、前例踏襲型の保守的な企業ではありません。酒造業からスタートしてトライアンドエラーを繰り返しながら今の地位を築きました。
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