「東証プライム市場」上場の6社に1社が「上場基準を満たさず」…日本の“株式市場再編”が骨抜きにされたワケ【経済ジャーナリストが解説】

「東証プライム市場」上場の6社に1社が「上場基準を満たさず」…日本の“株式市場再編”が骨抜きにされたワケ【経済ジャーナリストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

中小企業や名前の知られていない中堅企業にも良い会社はたくさんあります。 その見分け方がわかれば、転職等のキャリア形成、営業先の開拓、投資の是非の判断といったあらゆる局面で役立ちます。本記事では東洋経済新報社で編集委員を務める経済ジャーナリストの田宮寛之氏が、著書『ビジネスエリートが実践している 教養としての企業分析』(自由国民社)から、優良企業を見分けるための「企業分析」のポイントを解説します。

なぜ変わった?東証の新上場区分とは

◆60年ぶりに市場区分を変更

証券取引所は株を売買する市場です。

 

日本には「東京証券取引所(東証)」、「名古屋証券取引所」、「福岡証券取引所」、「札幌証券取引所」などがありますが、東証の規模が圧倒的に大きいので東証について説明します。

 

東証は「ニューヨーク証券取引所」や「上海証券取引所」とともに世界を代表する証券取引所の一つです。東証は企業規模などよって「プライム市場」、「スタンダード市場」、「グロース市場」の3つの市場に区分されています。

 

「プライム市場」には国際的に展開する大企業1838社が所属しています。株主数800人以上、時価総額(注)100億円以上などの基準をクリアした企業です。

 

「スタンダード市場」のメンバーは国内中心に事業展開する企業1449社です。上場基準は株主数400人以上、時価総額10億円以上です。

 

「グロース市場」には成長性の高い新興企業509社が所属しています。株主数150人以上、時価総額5億円以上が基準です(企業数は、3市場とも2022年12月16日時点)。

 

「プライム」、「スタンダード」、「グロース」といった区分がスタートしたのは2022年4月4日です。

 

それまでは「東証一部」、「東証二部」、「マザーズ」、「JASDAQ」の4つに区分されていました。東証が市場区分を再編するのは60年ぶりのことでした。

 

(注)時価総額

 

時価総額とは「株価×発行済み株式数」で計算され、企業規模を示します。数値が大きいほど会社の価値が高いと評価されます。

 

◆なぜ市場再編?

「東証一部上場」というと名門の一流企業というイメージがありませんか?

 

たしかに昔はそうでした。

 

東証一部に上場すれば、取引や資金調達、採用で有利になるだけでなく、名誉なことでもありました。

 

多くの企業が「東証一部上場」を目指し、歯を食いしばってがんばったものです。

 

ところが、2002年に東証が上場企業数を増やすために、上場基準を引き下げたことから、一部上場企業が急増します。

 

その後の約20年間で一部上場企業は約700社も増え、東証の上場企業全体の6割を占めるようになりました。

 

6割ともなれば名門一流企業ではなく、普通の企業です。個別に企業を見てみると、時価総額が10億円台の企業もあれば30兆円超の企業もあり、「東証一部上場」の価値が極めて曖昧となってしまいました。

 

また、東証二部、マザーズ、JASDAQの3市場とも、「これから成長して一部上場を目指す企業のための市場」というのがコンセプトであり、3市場の位置づけが分かりにくい状況でもありました。

 

そこで、明確なコンセプトをもとに4市場を3市場に再編したのです。

 

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ビジネスエリートが実践している 教養としての企業分析

ビジネスエリートが実践している 教養としての企業分析

田宮 寛之

自由国民社

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