加害者「“物損”なんだから、大した怪我ではないはず」→「慰謝料減額」に…!?交通事故の際〈人身〉で届け出なかった場合に“起こり得る事態”【弁護士が解説】

加害者「“物損”なんだから、大した怪我ではないはず」→「慰謝料減額」に…!?交通事故の際〈人身〉で届け出なかった場合に“起こり得る事態”【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

交通事故に遭い怪我をした。その際どんな対応をすれば、万事うまく収まるのでしょうか。多くの人にとって、事故には遭いたくないですし、経験値はほぼないもの。戸惑うのが一般的でしょう。そこで、ココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、交通事故の被害者になった際の的確な対応について、浅川有三弁護士に解説していただきました。

そもそも慰謝料というのは「不法行為によって被った被害者の精神的苦痛に対する慰謝」の額のことであり、本来苦痛の感じ方は人によって異なります。

 

ただ、基準がないと人によって不公平な結論になってしまう恐れがあるため、ある程度客観的な指標が必要となります。

 

交通事故の場合は、「怪我の内容」と「症状固定時までの治療期間」が大きな指標となっています。

 

ざっくり言うと、怪我が重く、治療の期間が長引けば長引くほど精神的な苦痛は大きくなり、慰謝料の額も大きくなります。

 

ただここで問題となるのが、基準となる治療期間が、治療を終えたまでの期間ではなく、症状固定時までの期間である、という点です。

 

症状固定というのは、「これ以上治療を続けても、治療の効果がなくなった時点」とされており、これは主治医の判断はもちろん、受傷の程度や治療の内容、事故の状況など、様々な事情を総合的に判断して決めることになり、その中に、警察での届出がどうだったか、と言うことも含まれています。

 

そのため、物損事故で届出をしている、かつ治療期間が長くなってしまうと、加害者側から「物損事故で届出をしているのだから、事故は軽微で、怪我をしていたとしてもそれほど重篤な怪我ではないはずだ。症状固定までの期間は、せいぜい1ヵ月だ!」などと主張されてしまうことがあります。

 

もちろん、数多くの事情を総合的に判断することになりますので、警察への届出が物損事故だから、というだけで症状固定までの期間が短くなるということはありませんが、治療期間が短い方向に働く事情であることは間違いありませんので、慰謝料額も減ってしまう可能性は0ではありません。

 

それだけではなく、怪我の内容についても「重篤な診断名が書かれているが、警察へは物損事故で届出をしているのだから、それほど大きな怪我を負うはずがない。本件事故とは無関係の怪我だ」などと主張されてしまうこともあります。

 

そのため、事故直後は興奮状態であまり痛みを感じなかったが、事故後何日かして痛みが強くなってきた、というような事情がある場合は、人身事故への切り替えも考慮したが方が良いかもしれません。

 

また、双方で事故態様に争いがある場合も、注意が必要です。

 

交通事故が起きた直後は興奮状態にあることもあり、当事者双方が事故の状況などをはっきりと覚えておらず、または勘違いをしてしまい、後日争いになってしまう、ということもあります。

 

最近はドライブレコーダーを搭載している車も増えてきており、客観的に事故の状況が確認できるケースも多いですが、客観的な事故状況がわかる資料がない場合、警察の作成する資料が有力な証拠になります。

 

しかし、刑事で事故と扱われるのは、原則として人身事故に限られますから、物損事故で届出がされた場合、警察では詳細な資料を作成されません。

 

そのため、事故状況が立証できず不利に扱われてしまう、ということもあります。事故状況に争いが生じるような事案の場合、この点についても考慮が必要となります。

 

以上のとおり、警察に人身事故として届け出るか、物損事故として届け出るかは、民事上の損害賠償請求には直接影響はしません。

 

ただ、物損事故のままですと、怪我の状態や治療期間を判断する際、被害者に不利に認定されてしまう恐れがあることや、警察が詳細な調書を作成しない、というデメリットもあります。

 

従いまして、物損事故のままにするか、人身事故に切り替えるかは、この点も考慮して判断した方が良いでしょう。

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