(※写真はイメージです/PIXTA)

一家の大黒柱が亡くなったときに、残された家族が路頭に迷わないよう、日本では公的年金制度として「遺族年金」が準備されています。しかし、遺族年金だけで、残された子どもと専業主婦の妻が生きていくのは、かなり大変だといえます。実情を見ていきましょう。

健康管理に、人一倍気を配っていた40代の夫が…

これまで病歴もなく、健康診断結果にも問題なかった40代サラリーマン。週に1回、会社帰りにジムへ寄って軽く汗を流すほか、休日にはわが子とランニングも。専業主婦の妻が作るバランスのよい食事をとり、会社には彩り豊かな手作り弁当を持参。夜の付き合いもほどほど、お酒もたしなむ程度。健康管理には人一倍気を使っていたのに――。

 

「あなた、一体どうして…!」

 

人生100年時代、40代の若さで夫・父親を亡くすことなど、家族のだれが想像するでしょう。

 

日本には、残された家族を守る公的なサポートとして「遺族年金」という仕組みがあります。

 

遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。

遺族年金には、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」があり、亡くなった方の年金の加入状況などによって、いずれかまたは両方の年金が支給されます。

亡くなった方の年金の納付状況・遺族年金を受け取る方の年齢・優先順位などの条件をすべて満たしている場合、遺族年金を受け取ることができます。

日本年金機構ウェブサイトより)

 

厚生労働省『令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、遺族基礎年金の受給者は約4万人、遺族厚生年金の受給者は573万人です。


「遺族基礎年金」の受給要件は、下記の通りとなっています。

 

①国民年金の被保険者である間に死亡したとき

 

②国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき

 

③老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき

 

④老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

 

要件を充たしていれば、「子どものいる配偶者」または「子ども」が遺族基礎年金を受け取ることができます。

 

「遺族厚生年金」の受給要件ですが、下記のようになっています。

 

①厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき

 

②厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき

 

③1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき

 

④老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき

 

⑤老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

 

要件を充たしていれば「妻」「夫」「子ども」「孫」「両親」「祖父母」が順次的に遺族厚生年金を受け取れますが、細かい条件が定められているので、まずは自身が対象者に該当するかどうか、年金事務所などで確認するようにしましょう。

支給される遺族年金額と、その計算式

実際の受給額は、遺族基礎年金の場合、子どもがいる配偶者が受け取れるのは「77万7,800円+子の加算額」、子どもが受け取るときは、「77万7,800円+2人目以降の子の加算額」となっています。加算額は、2人目までが各22万3,800円、3人目以降が各7万4,600円です。


遺族厚生年金のほうは、老齢厚生年金の4分の3です。厚生年金であれば、加入期間が2003年3月までは①「平均標準報酬月額(≒平均月収)×7.125/1000×2003年3月までの加入月数」、加入期間2003年4月以降は②「平均標準報酬額(≒平均月収+賞与)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数」で計算できます。

 

大卒の46歳サラリーマンが亡くなった場合を例として考えてみましょう。大学卒業後、大卒男性の平均的な給与を手にしてきた場合、その時点で平均標準報酬額は47万円です。簡易的に上記②で計算すると、年77.2万円程度、1ヵ月あたり6.4万円ほどの遺族厚生年金が支払われることになります。

 

子どもが1人いる場合、妻が受け取れる遺族年金合計額は、年間およそ177万円です。1ヵ月で14.7万円ほどが、当面の間、残された妻と子どもの生活費となるわけです。

 

「うっそ、たったこれだけ!?」

「これから、どうやって生活すればいいの…!」

 

このご時世、1ヵ月当たり14万円程度で親子2人が生きていくことはできません。金額を目にして、思わずこんな言葉が口を突いて出てしまう妻も…。

 

当然、働きに出ることを考えることになるでしょうが、家事に専念してきた専業主婦の場合、十分な収入を得られるだけの仕事を探すのは、簡単ではないでしょう。

 

東京23区在住の41~59歳の妻と小学生の子どもという母子家庭のケースでは、最低生活費は21万4,960円(生活補扶助基準額12万1,970円、母子加算1万8,800円、児童養育加算1万0,190円、住宅扶助基準額6万4,000円。だだし家賃がこれよりも少ない場合は、その額を支給)です。

 

生活保護を申請すれば、遺族年金との差額である月7万円程度の支給が受けられる可能性もありますが、その際には、就労の可否や貯金額についても調査が行われるため、申請したからといって受給できるとは限らないのです。

 

非常にありがたい制度ではありますが、遺族年金だけで生きていくのははやり大変です。その点を踏まえ、「備え合えれば憂いなし」を実践しておくことが重要なのです。

 

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