75歳社長「精神も肉体も限界だ。 会社を1億円で売却したい!」…会社を少しでも高く売る、意外なテクニック

75歳社長「精神も肉体も限界だ。 会社を1億円で売却したい!」…会社を少しでも高く売る、意外なテクニック
(画像はイメージです/PIXTA)

M&Aによって中小企業の事業承継をおこなうケースが増えています。一方で、どのくらいで売れるかは、いまひとつ見通しが立ちにくいのが実情です。事業承継を目的としたM&Aで、売却価格を最大化する方法はあるのでしょうか。M&Aの交渉現場で、買い手候補から高い金額を提示される秘訣についてみていきましょう。M&Aや事業承継を多く手掛けている、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

高齢となった経営者、いよいよ引退を考えるが…

社長:先生、私も75歳になり、精神的にも肉体的にも、もう限界です…。思い切って引退することを決めました。そうはいっても、子どもたちは経営に興味がなく、高齢の従業員も継ぐのは難しくて…。長年にわたり従業員と一緒に仕事をしてきて、このような判断をするのは非常に難しい決断でしたが、M&Aで他社に継いでもらおうと決めました。私にとって、最善の選択だと考えています。

 

先生:そうでしたか。体調もイマイチだとおっしゃっていましたね。

 

社長:もう若くないですし、持病もあり通院が必要です。今後も仕事を続けることができるかどうか、不安を感じていました。それに、家族と過ごす時間をもっと大切にしたくて…。いまM&A仲介業者に相談しています。

 

先生:そうなんですね。いい相手は見つかりましたか?

 

社長:実は、M&A仲介業者から買い手候補を紹介されたのですが、そこから提示された金額が予想以上に低いため、悩んでいます。

 

先生:それは、よくある話ですね。でも、買い手候補から提示される金額は基本的に低く提示されるものですよ。それは、買い手側ができるだけ安く買いたいと考えるためです。

 

社長:それはわかりますが、ほかに高い金額を提示してくれる買い手候補がいるかもしれませんよね。でも、M&A仲介業者が紹介してくれないのです。

 

先生:そのような場合は、M&A仲介業者だけに頼らず、公認会計士のようなファイナンシャル・アドバイザーにも相談することをお勧めしますよ。

 

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社長:公認会計士の先生もM&Aを仲介してくれるんですか?

 

先生:いいえ。公認会計士は、仲介という契約はおこないませんが、買い手を紹介し、M&Aの進め方を助言します。公認会計士がおこなっているのは、両手取引の仲介ではなく、片手取引のファイナンシャル・アドバイザリー業務だからです。これで、売り手の利益を優先されることになるので、もっと高い金額の提示を受けることができるかもしれませんよ。

 

社長:なるほど、そのような業務があるんですね。

買い手にとって魅力的なら、高額で売却できる可能性アリ

先生:また、高い金額の提示を受けられるということは、買い手に高い価値を評価してもらうということです。買い手にとって魅力的な事業でなければいけません。

 

社長:魅力的な事業というのは、どういったものですか?

 

先生:それは「将来成長する事業」です。これからどんどん利益が増えていくような計画を見せると、魅力的だと思ってもらえますよ。

 

社長:私の希望としては、1億円くらいは出してほしいと思っています。

 

先生:社長が「希望価格は1億円」だと要求する場合、1億円という事業の価値は、どのような事業計画に基づいているのか、その計画は実現する可能性があるのか、社長ご自身のお考えをわかりやすく説明しなければなりませんよ。

 

社長:事業計画を描くのはいいですが、それを実行するのは、私ではなく相手の会社ですよね? 相手の社長によって結果が変わるのではないですか?

 

先生:おっしゃるとおりです。だから、買い手候補を選ぶときは、経営者の能力が高く、承継した事業を成長させる力のある会社を選ばなければいけません。

 

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買い手候補は〈カリスマ経営者 or 雇われ社長〉どっちがいい?

社長:買い手候補が投資ファンドでもいいのですか? 投資ファンドには経営者がいませんが。

 

先生:投資ファンドでもいいですが、事業会社のほうが高い金額を提示してくれる可能性が高いです。なぜなら、相手方の事業と、社長から承継する事業をまとめて経営することで、売上の拡大やコストの削減が可能となることです。これをシナジー効果と言うんですよ。

 

社長:なるほど、相手の経営者の能力を頼りにするわけですね。そうであれば、カリスマ性のある優秀なオーナー経営者がいる会社のほうがよいのでしょうか?

 

先生:そういうわけではありません。オーナー経営者だと、M&Aの失敗が自分の個人財産に影響を及ぼすため、慎重な態度で臨んできます。その点、上場している大企業のサラリーマン社長だと、M&Aに失敗しても、自分の個人財産とは無関係です。サラリーマン社長は、M&Aの成功や失敗よりも、短期的に「M&Aを実行した」という実績だけで評価されますから、「買収したい」という事業があれば、高い金額を出してきますよ。一方で、投資家からも「M&Aをやれ」とプレッシャーを受けているようですから、「買いたい」気持ちが強いでしょうね。

 

社長:なるほど、それはいいですね。でも、うちの事業に関心を持つ上場企業を紹介してもらうことは可能なのでしょうか?

 

先生:それは可能です。M&A仲介業者でも紹介してくれるかもしれませんが、公認会計士は、大企業の会計監査を通じて、上場企業とのネットワークを持っていますよ。買い手候補として上場企業を優先的にリストアップし、その中から、最も高い金額を提示してくれる買い手候補を見つけてはいかがでしょうか。そのような探し方をするのであれば、公認会計士に相談するというのも、ひとつの選択肢になるでしょう。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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